2. スーパー・ドラッグストアなど、接種会場の選択肢が幅広い
2つ目の相違点に、接種できる場所が挙げられる。ハワイの人口のおよそ7割、約98万人が暮らすオアフ島では、イベント会場や映画館などの大型特設会場と、各地を周る“接種バス”を合わせて、全部で9カ所設けられている。それに加え、ドラッグストアやスーパーマーケットでも接種が可能だ。
アメリカでは大型スーパーマーケットには薬局が併設され、食料品の買い物のついでに、インフルエンザなどのワクチン接種ができるシステムだ。これを利用して、コストコ、ウォルマート、セーフウェイなどのスーパーでもワクチン接種が行われている。筆者が予約した際は、自宅から徒歩15分圏内に接種できる場所が5カ所ほどあり、まず接種場所の選択肢の多さに驚いた。
さらにオアフ島の大型特設会場の1つでは、接種できる時間は午前6:30から午後8:30までと幅広く、土曜日と日曜日も対応。出勤前や仕事帰りなど、できるだけ多くの人が立ち寄れるよう運営されている。さまざまなライフスタイルの人が接種に訪れやすい環境が整えられていると言える。
ちなみに、オアフ島と人口がほぼ同じの千葉市では、市内の提携医療機関は300カ所以上あるが、集団接種会場は1カ所のみ。人口92万人の東京都世田谷区では、提携医療機関は19カ所にとどまっている。
ワクチンのメーカーについては、ハワイではファイザー、モデルナ、ジョンソン・エンド・ジョンソンと、アメリカ企業3社のものを用意している。12~17歳はファイザーのみと決められているが、18歳以上の成人は自分でいずれかのメーカーを選ぶことになる。接種場所や曜日ごとなどで、いずれかのメーカーのワクチンが用意されているため、自分が受けたいメーカーのワクチンを接種できる場所を選ぶこととなる。
3. ワクチンへの期待度の高さ
最後に、ワクチンそのものに対する人々の期待度の高さについて、取り上げたい。ハワイ州保健局がワクチン接種開始前に行った住民への調査では、「ワクチンを接種する」と答えた人は住民の約50%だった。しかし接種が開始した後に行われた調査では、「すぐに接種する」が55%、「しばらくしたら接種する」が36%で、接種を前向きに検討している人が91%と、接種希望者が大幅に増加した。
「ワクチンを接種しない」「様子を見る」と答えた人に、その理由について尋ねたところ、およそ4割が副作用やワクチンが及ぼす長期の影響への懸念を挙げていた。だが、人々の間で接種が進み、ワクチンを打った人に大きな副作用がなく元気でいることを目の当たりにして、ワクチンに対してポジティブに受け止める人が増えてきたものと推測できる。これを反映するように、ハワイの接種率は1回終了した人が人口の58%、2回とも終了した人は51%(5月28日時点)で、全米で上位の割合となっている。
またワクチンが開発される前は、アメリカは感染者が世界トップレベルで多く、経済は大打撃を受けてきており、その影響で人々の間でワクチンへの期待が高まってきた可能性も考えられる。
一方、日本では2021年3月に発表されたワクチンへの国際世論調査で、「1カ月以内に接種したい」と答えた人の割合は49%。他国と比較すると、日本にはワクチンに対する不信感が大きく、ワクチンを受けたいと考える人の割合は低水準にある。欧米を始め他国で接種が進んでいても、周囲に接種した経験者が少ない現状では、「様子を見たい」という心理が働くことは理解できる。だが、日本でも一般への接種が始まり、家族など身近な人が接種を受けていけば、人々の間でワクチンに対する意識が変わっていくことも考えられる。
変異株による感染の急増が不安視され、さらに五輪開催に揺れる日本にとって、今後いかに迅速に多くの人にワクチン接種を進めるかが重要だ。一方、ハワイでは予約無しで接種できる場所も増えており、それだけ接種に余裕が出てきたことがうかがえる。アメリカ独立記念日の7月4日までに成人の7割が少なくとも1回の接種を受けるという、バイデン大統領が打ち立てた目標に向けて、接種ペースをいかに維持するかがこれからの課題になっていくだろう。