「神戸に稼げるアリーナを」民設プロジェクトの可能性と責任


関西のバスケットボール事情を少し紐解くと、2012年にはパナソニックがトライアンズを休部とした。そのパナソニックを継承したチームが和歌山トライアンズとして生まれ変わり、当時のナショナル・バスケットボール・リーグ(NBL)に参戦するが、2015年には経営破綻。トライアンズに所属していた選手達の中には西宮ストークスに移籍した者もいる。そこで再び西宮で苦しい思いはさせたくなかったという。
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「プロスポーツチームが企業の収益状況によって潰れたり、無くなったりすることは避けないといけない。スポーツビジネスそのものがいろんな可能性を踏まえ、横の広がりを持たせながらプラットフォームとして機能していくことで結果的に選手にそれを還元し、スポーツの魅力を伝えられると思います。それが上手くワークさせられていないなという感覚を持っていたので、それを目指していこうという思いで引き受けました。アリーナに関しては当然やるよねと思っていました。」


ストークスを引き受けて、マイホームのための資金を注ぎ込んだと笑う渋谷氏。億単位のお金が動くスポーツビジネスという厳しい世界でも「へこたれない」覚悟と感謝を忘れない

新アリーナ構想の舞台は神戸に、民設で


デロイト トーマツ グループ発行の『Bリーグ マネジメントカップ 2020』によると、西宮ストークスの売り上げは約2億5000万円。日本ではアリーナ建設に掛かる費用が約100〜150億円と言われている。例えるならば年収250万円の人が1億から1億5千万円のマイホームを建てようとしていることになる。格安の家や賃貸という選択肢ではなく、自分の立派な家を作って住もうとしているのがストークスの描く壮大なるプロジェクトだ。
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西宮には固定で1344席の西宮市立中央体育館が存在する。1965年に竣工した体育館を建て替えるという話が西宮市の中でも浮上し、共に新たなアリーナ建設へ動いていくものと思われた。だが市長が変わるなど風向きが変わってしまい、実現に至ることが出来なかった。新市長とも幾度と協議を続け、西宮市にアリーナを作ることを最後まで目指したが、議会が一枚岩にならずスムーズさを欠くことになった。あくまでも公設でのアリーナ作りを最初は目指していたが、他の土地で模索することが必要となり民設アリーナで進めていく流れとなった。

そこで切り替え、民設で行く!という思いきりが神戸市でアリーナ構想を進めていく上では大きかったと渋谷氏はいう。行政が協力的で、神戸港ウォーターフロント新港第2突堤が候補地として使えることが判明してからは急ピッチで物事が動き出した。

さらには民間からのサポートも欠かせなかった。神戸市に本社を置くアシックスの尾山基会長CEOが場所選定などを含めた協力の手を差し伸べ、エヌ・ティ・ティ都市開発、NTTドコモと共にコンソーシアムを作り出す。神戸にアリーナを作る夢に共感した人達が様々な縁の下に集まり、動き出す。
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文=新川諒 編集=宇藤智子

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