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2021.06.02

東証マザーズ初上場は通過点。台湾スタートアップの隆々発展


以下は、2019年の台湾スタートアップの資金調達の概要を示したもので、90社のスタートアップの投資総額は2億1900万米ドルを超えている。

資金調達の概要の円グラフ

● Health Tech

1995年に国民健康保険(NHI)と呼ばれる医療制度が制定され、2005年には人口カバー率は99%に上る。さらに、2009年に国家電子健康記録システムを導入し、NHIと国民の健康記録が包括的に整備された。また、2018年には台湾が高齢化社会(人口の14.05%が65歳以上)に突入したことから、スタートアップにとって確立された市場がある為、製品開発に力が入る。

台湾のヘルステック市場は規模こそ小さいものの、国内外スタートアップがアジアに進出するための良い出発点となる。例えば、台湾の病院を臨床試験の拠点として活用し、迅速なアプローチで規制当局の承認を得て、製品をアジア市場に広めることで、国内外スタートアップのアジア市場参入を支援しているBE Acceleratorは、3年間で49社の国内外のスタートアップ企業を支援し、総額5000万ドルを調達している。

● 半導体産業

台湾の半導体産業は高品質な製造能力とサプライチェーンにより、世界市場で重要な役割を果たしており、OEMとパッケージ/テストの両方で世界市場シェア第1位、IC設計で世界市場シェア第2位だ。その世界市場での主導的地位を維持するために、デジタルトランスフォーメーション等の企業革新に向けて動く一方、チップ開発や高度な製造プロセスなどのコア技術力を高めるために、資本や研究開発人材の投入を続けている。

● B2B

台湾は製造業やIC設計に強く、ハードウェアのサプライチェーンがよく整備されており、世界中で使用されているスマートフォンや電気自動車の部品の多くは、台湾で製造されているか、台湾の企業によって製造されている。台湾企業のビジネスユニットがスピンオフし、親会社に特化した製品やソリューションを開発することもよくある。

参考:2019 Taiwan’s Startup Investment Scene /2020 Annual Report - The State of Taiwan’s Corporate Innovation and Startup Ecosystem / 2020 Taiwan Corporate Innovation Report 


投資家について


スタートアップ投資を行っている地元企業やCVCの割合は非常に高く案件の約59%を占め、VCは次いで約43%となっている。台湾政府も積極的でスタートアップへの投資総額の約16%は国家発展基金(NDF)だ。

以下のグラフは、台湾における投資家の構成を示す。(投資には複数の企業が関わっていることが多いため、合計の割合は100%を超える。)

投資家の構成の割合

台湾ではビジネスする際に必要な給料などの管理費やオフィスの賃貸料などが他国に比べて低い為、100万米ドルは台湾の平均的なビジネスを維持するのに十分な金額であり、スタートアップが次のマイルストーンに到達するのに十分な期間が捻出される。

台湾では投資規模が小さく、半分以上が戦略的投資であるため、出口戦略はM&Aを見据えることが多く、AppierやGogoroのようにユニコーンとなるケースは稀だ。

参考:2020 Taiwan Startup Investment Scene Report

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文=森若幸次郎 / John Kojiro Moriwaka

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