ビジネス

2021.05.25

JPモルガン、従業員向けヘルスケア部門新設 アマゾンなどとの合弁頓挫

JPモルガン・チェースCEOのジェイミー・ディモン(Photo by Mark Wilson/Getty Images)

米金融大手JPモルガン・チェースは、雇用主が提供するヘルスケアの向上などに取り組む事業部門「モルガン・ヘルス」を新たに立ち上げると発表した。同社は3年前に米アマゾン・ドット・コム、米投資会社バークシャー・ハサウェイと共同でヘルスケアサービス会社を設立したが、この会社は今年2月に閉鎖されていた。

20日に発表した。新部門のトップには、首都ワシントンに本社を置くヘルスケアコンサルティング会社、アヴァラー・ヘルスの創業者で最高経営責任者(CEO)を務めたダン・メンデルソンが就く。本部は同じく首都ワシントンに置く。

JPモルガンによると、モルガン・ヘルスは「有望なヘルスケアソリューション」に最大2億5000万ドル(約270億円)を投資するほか、他社と戦略的パートナーシップも結ぶ予定。健康の公平性という問題にも取り組むとしている。

米国内に約16万5000人の従業員を抱えるJPモルガンは、従業員とその扶養家族計およそ28万5000人に医療保険を提供している。

メンデルソンは声明で「JPモルガン・チェースは長年、従業員のヘルスケア向上に力を入れてきた」としたうえで、「これまで学んだことを生かして、雇用主が提供するヘルスケアの市場でイノベーションを加速していく」と強調。目標を共有する企業との提携や、そうした企業への出資なども進めていく考えを示した。

JPモルガンとアマゾン、バークシャーは2018年、従業員向け医療費の削減などに向けて合弁会社「ヘイブン(Haven)」を設立。バークシャーを率いる著名投資家のウォーレン・バフェットは当時、拡大する従業員向け医療費を「米経済をむしばむ飢えた寄生虫」にたとえていた。

カイザー・ファミリー財団(KFF)によると、米国人の約半数は雇用主を通じて医療給付を受け取っている。米連邦政府の推計では、全米の年間医療費は2019年時点で3兆8000億ドル(足元のレートで約413兆円)、1人あたり1万1582ドル(同約126万円)に達する。医療費の伸びは物価上昇率を上回っており、2019年時点では前年比4.6%増だった。

ヘイブンが3年で頓挫したことは、潤沢な資本をもつ大企業ですら、米国の複雑な医療制度の壁を乗り越えるのは難しいことを示している。ヤフー・ファイナンスによると、バフェットは今月開かれたバークシャーの株主総会で、「わたしたちは米経済に巣食う寄生虫と戦っていたが、勝ったのは寄生虫のほうだった」と“敗戦”を認めた。

編集=江戸伸禎

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