ロシア軍特殊部隊も実践する「逆境に負けない」心と思考の作り方(前編)

システマ東京代表で公認システマインストラクターの北川貴英(photo by Daisuke Taniguchi)


システマ独自の呼吸方法「ブリージング」とは?


紹介した4原則の中でも特に重要視されているのが、「呼吸」だ。多岐にわたるシステマのトレーニングにおいても「ブリージング」と呼ばれる独自の呼吸法が欠かせないとされている。
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photo by Daisuke Taniguchi

やり方は非常に簡単で、鼻から息を吸って、口をすぼめて「フーッ」と軽く音を立てながら吐くだけ。吸いきったり、吐ききったりすることもなく、あくまで体が楽に感じる深さで呼吸をする。

「ブリージングの目的は、普段どおりの呼吸に戻ること。何か特別な精神状態にもっていくための呼吸ではないので、シンプルでいいのです。ただ、いくつか注意したいポイントがあります」(北川氏)
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そのポイントとは5つある。

1)姿勢を曲げないこと
…深呼吸をするときのように体を反らせたり、前屈みにはしない。

2)緊張しないこと
…リラックスが目的なので、力んでいたらほぐす。

3)特定の部位を使わないこと
…腹式呼吸や胸式呼吸などをせず、全身を満遍なく使って呼吸する。

4)口から吸わないこと
…口から息を吸うと空気が入りすぎ、体が緊張してしまうためだ。

5)音を軽く立てること
…呼吸が浅いと呼気は弱くなり、音が出ないもの。「フーッ」と音が聞こえるくらいの強さが望ましい。

「極めて簡単な方法ですが、ブリージングは逆境に強い心をつくるための万能薬です。ちょっとでも不安や緊張を感じたら、すぐにやってみてください。そうすることでブリージングを日常で活かしていくコツがわかりますから」(北川氏)

いかなる状況でも最大のパフォーマンスを発揮することを目指すシステマのメソッドにおいて、その至高の奥義は呼吸法にあった。鼻から吸って、口から「フーッ」と吐く。たったこれだけで心のコンディションを整えられるのだから、やらない理由はどこにもないだろう。

ロシア軍の特殊部隊が採用している教育メソッドと聞いて、初めは難しいものを想像していたが、4原則の話を聞いて、実はやるべきことは非常にシンプルなんだと驚かされた。

もちろん、実際の練習を積むことによる学びが大きいことは間違いないが、この4原則を普段の生活に取り入れるだけでも効果があるという。この手軽さもシステマが支持される理由のひとつではないだろうか。

後編では、多少のことでは動じない心をつくるためにシステマが重視する「キープ・カーム」という心がけと、コロナで一変したストレスフルな社会を生き抜くためのシステマ的処方箋についてお伝えする。

>> ロシア軍特殊部隊も実践する「逆境に負けない」心と思考の作り方(後編)


北川貴英◎システマ東京代表。公認システマインストラクター。2008年にシステマの創始者、ミカエル・リャブコ氏より公認システマインストラクターに認定される。首都圏を中心に年間約400コマを越すクラスを受け持つほか、防衛大学校をはじめとする公的機関でも指導。マンガ『アンダーニンジャ』やNHKドラマ『ディア・ペイシェント』では技術指導を担当した。著書に『システマ入門』(BABジャパン)、『システマ・フットワーク』(日貿出版社)、『逆境に強い心のつくり方(PHP)』など。著作「人生は楽しいかい?」がアマゾンAudible総合で1位となる。

text by Jun Takayanagi(パラサポWEB)

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