【対談】大友啓史監督&佐藤健 「るろうに剣心」を10年続けて得られたもの

大友啓史監督(左)と佐藤健さん(右)/撮影=今井裕治


──6月4日に公開となる「るろうに剣心 最終章 The Beginning」は、佐藤さんが10年前に演じた1作目よりも前の物語です。若い剣心を演じる難しさとは?
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佐藤:まずアクションシーンの練習に取り組みました。アミノ酸を飲んで、とにかく体力作りも。いまは人を斬らないと心に決めた剣心が、まだ戦を駆ける「人斬り抜刀斎」だったころの話なので、これまでとは違うアクションが必要でした。

るろうに剣心
(c)和月伸宏/集英社 (c)2020 映画「るろうに剣心 最終章 The Beginning」製作委員会

2012年の1作目のときは、マンガとアニメを見返して、理想的なヒーロー像の体現を目標にしていたんです。今回も、撮影中には「こう動いたほうが、より臨場感があるんじゃないか」とか「かっこよく見えるんじゃないか」という提案は自分からしましたね。
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大友:不思議なもので、人って、楽しいと老けないけれど、つらいと老け込んでいっちゃう。自分たちが築き上げた明治という新時代の剣心は若々しく見えて、幕末に「人斬り抜刀斎」として散々人の命を奪い、どこか荒んでいた剣心は、少し老けた印象があってもおかしくはないと思っています。

佐藤:20代で「The Beginning」の剣心を演じていても、納得いくものはできなかったでしょうね。32歳という今のタイミングだからこそ演じられたと思っています。

時代劇にひっぱられない。目指したのは「マーベル」


──時代感がリアルに描かれている一方で、マーベル作品を思わせるようなアクションシーンが印象的です。

大友:「るろうに剣心」は1作目からスタッフに「マーベルをやるんだ」と伝えていました。「時代劇だ」と思って取り組むと、オールドファッションというか、そのルールに囚われてしまう。引き算で画面をつくっていく意識が強くなってしまうんですね。

実は「龍馬伝」のときには、舞台である土佐は「砂塵が舞うメキシコだ」ってスタッフには伝えていました。水路の街、江戸はベニス(笑)。全部違う言葉に変換して、チームのクリエイティブを刺激しました。

それこそ、剣心が着ている赤い着物は、時代劇のフレームからすると考証的にも厳しい。でも、その型から抜け出すことで、斬新なメイクにしたり、剣術以外に柔術や新しい格闘術を混ぜたり、派手に血を流させたり、思い切ったことができるんです。

るろうに剣心
(c)和月伸宏/集英社 (c)2020 映画「るろうに剣心 最終章 The Final」製作委員会

「The Final」までの4作は、自分にも「マーベルをやるんだ」と言い聞かせていました。「The Final」のラスト、「いけー! 剣心!」と仲間たちが盾になって剣心の背中を押す描写は、少年マンガの王道を意識しましたね。

一方で、「The Beginning」のメイン舞台は京都です。他の作品とは差別化して、時代劇の雰囲気を大切にしました。とはいえ、いろいろな手法を発見し新しい表現を切り開いてきたと自負するシリーズの大トリですからね。僕たちにしかつくれない、「現在(いま)の時代劇」にしっかり落とし込めるよう、さまざまな工夫を凝らしています。
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文=嘉島唯 写真=今井裕治 編集=松崎美和子

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