世界の死刑執行件数は減少傾向にあり、2020年の値は過去10年で最少水準だった。なかでも中東では明るい兆しがみられた。
サウジアラビアでは、2019年から2020年にかけて死刑執行件数が85%減少し、イラクでも半数以下になった。バーレーン、ベラルーシ、日本、パキスタン、シンガポール、スーダンは、2019年にアムネスティに名指しされたが、2020年には、これらの国のすべてで死刑が執行されなかった。
残念ながら、減少傾向はすべての国にあてはまるわけではなく、2020年に死刑執行件数を増やした国もあった。一例がエジプトで、2020年には前年の3倍にあたる57人の死刑を執行した。南北アメリカ大陸で唯一死刑制度を維持している米国では、2020年に17件の死刑が執行された。ほかにも、2020年に死刑執行を再開した国として、インド、オマーン、カタール、台湾が挙げられている。
中国は依然として世界トップの死刑執行国であり、2位以下を大きく引き離している。中国は、死刑執行と死刑判決に関する情報を国家機密としているが、毎年数千人の受刑者の死刑が執行されていると見られている。北朝鮮も死刑が頻繁な国とされるものの、データ不足のため、アムネスティのリストには含まれていない。
北朝鮮を除くと、中国に次いでもっとも死刑執行件数が多い国はイランで、2020年の執行件数は少なくとも246件だった。以下、イラクが45人、サウジアラビアが27人となっている(いずれも最少推定)。イラン、エジプト、イラク、サウジアラビアを合わせると、数が判明している2020年の世界の死刑執行件数のうち88%を占める。
アムネスティは声明のなかで、死刑執行件数の減少は主として、定期的に刑を執行している一部の死刑制度維持国において減少がみられた結果であるとした。さらに、新型コロナウイルスのパンデミックにより一部の国で死刑執行が停止されたことも、結果に多少の影響を与えたという。
アムネスティ・インターナショナル発表による、2020年世界の死刑執行件数
執行数は最少推定、中国はデータ未公表