「NBA Launchpad」発足 NBA流のオープンイノベーションはココがすごい

Photo by Rick Madonik/Toronto Star via Getty Images


話をNBA Launchpadに戻そう。NBA Launchpadも、参加申請→ファイナリストによるプレゼン→最終参加企業の決定、という流れはアクセラレータープグラムに近いものがあるが、何よりこのプログラムの画期的なところは、解決して欲しい具体的なイシューを先に明示している点だ。
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NBA Launchpadでは、次の4つが優先順位の高い課題として掲げられている。

1. ユースバスケットボールにおける健康・ウェルネスの向上
2. エリートユース選手のパフォーマンス向上
3. 足首の怪我の予防・回復
4. レフリーの訓練・育成のレベルアップ

アクセラレータープログラムなどでは、「顧客体験の向上」「視聴体験の革新」といった形でもう少し幅広く(言い方を悪くすれば、曖昧な形で)テクノロジーの応用領域を示しているケースが少なくない。しかし、技術を応用できる間口を広げればテック企業には喜ばれるかもしれないが、当たり外れが増えてしまう。テック企業が必ずしもスポーツビジネスの課題を正確に把握しているわけではないので、「イシュー・ドリブン」を実現するにはスポーツ組織による一定のガイドが必要だ。
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その意味で、NBA Launchpadが解決すべきイシューを先に提示しているのは、プログラムが迷走するのを防ぐうえで大変効果的だと思われる。4つの課題はいずれもユース選手やレフリーの育成に関するものが中心である点もユニークで思慮深い。NBA Launchpadが解決を目指す「4つの課題」の背景を簡単に解説してみたい。


Photo by Anthony Dibon/Icon Sport via Getty Images

バスケットボールに限らず、米国ではここ10年くらいの間にユーススポーツが大きく変容してしまった。そのきっかけになったのが、日本では「リーマン・ショック」として知られる、2008年に起こった世界的金融危機だ。

金融危機に際し、米国政府は金融機関救済のために7000億ドル(約70兆円)もの巨額の公的資金を投入した。これにより、連邦政府から州政府やその傘下の地方自治体に回される補助金が大幅に削減され、地域のユーススポーツでは、子供の親が競技の備品(ボールやバット、ユニフォーム、スパイクなど)の費用負担を強いられることになった。それまでは補助金で賄われていたものだ。

米国では、春から夏に掛けては陸上や野球、秋から冬はアメフトやバスケといった具合に、季節によりプレーする競技を変えるのが一般的だ。しかし、親が費用負担するようになって以来、「大切な我が子に少しでも高いレベルのスポーツ教育を受けさせてあげたい」という思いから、ユーススポーツの早期専門化(若いうちに競技を1つに絞って専門的なコーチをつけて反復練習させる)が進展した。
次ページ > 行き過ぎたユーススポーツの早期専門化には「リスク」

文=鈴木友也 編集=宇藤智子

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