ブラジルの野良犬・野良猫から、新型コロナの抗体を発見

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伴侶動物、なかでもイヌとネコは、ヒトと同じ環境で密に接触しながら暮らしている。私たちは、家庭や公共の場で飼われている動物と共存することに伴う公衆衛生上のリスクを警戒しているが、もうひとつの側面は見落とされがちだ。それは、私たち自身が、野良猫や野良犬をヒト由来の病原体にさらしているということだ。高い感染力をもつ新型コロナウイルス(SARS-CoV-2)も例外ではない。

ブラジルのオズワルド・クルス研究所に所属するフラビア・バレト・ドスサントス(Flavia Barreto dos Santos)らは、オープンアクセスの学術誌「PLOS One」に2021年3月25日付で掲載された新たな研究論文で、リオデジャネイロに棲む野良猫と野良犬から新型コロナウイルスの抗体を発見したと報告した。これにより、飼い主のいない動物たちが、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)のパンデミックに対して無防備である可能性が示された。

ブラジルには、推定7810万頭のイヌとネコがペットとして飼われている。このうち約5%は、正式な飼い主を持たず、NGOなどに保護された状態にある。

ブラジルの症例数と死者数は、ラテンアメリカで最多だ。ブラジル保健省は2020年2月26日、国内初の新型コロナウイルス感染者を確認した。そこから同年10月末までに、約550万人が感染し、15万9000人以上が死亡した。

ブラジル南東部は国内でもっとも人口の多い地域であり、新型コロナウイルス感染症の症例の大多数がこの地域に集中している。もっとも被害が深刻なのはサンパウロとリオデジャネイロだ。ブラジルでは、南米で最多の新型コロナウイルス感染症患者が発生しているものの、伴侶動物の新型コロナウイルスへの曝露については調査が進んでいないと、研究チームは指摘する。

ネコとイヌが新型コロナウイルスに感染する経路は、主に以下の3つだ。

1) 他の感染動物との接触
2) 感染したヒトとの接触
3) ウイルスが存在する環境への曝露

新型コロナウイルスのRNAは、すでにブラジル大都市の公共物の表面や下水から検出されており、こうした環境が感染源になる可能性が指摘されている。
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翻訳=的場知之/ガリレオ

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