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シネマ未来鏡

2人の「11月9日」はいつまで続くのか (c)2020 PS FILM PRODUCTION,LLC ALL RIGHTS RESERVED.

誰でも人生がやり直せたらと思うことがあるのではないだろうか。映画「パーム・スプリングス」の主人公ナイルズは、その人生を、(本作品の脚本家の発言によれば)もう40年間、1万回以上繰り返している。

とはいえ、人生のやり直しもここまでとなると、さすがに辟易とするらしい。ナイルズは、延々と繰り返される11月9日に対して、なす術もなく、「すべては無意味」と呟き、絶望と虚無感に囚われている。

しかし、ある日、事態が一変する。自分が好意を寄せた女性サラが、このタイムループの「同行者」となるのだ。恋する人と一緒に繰り返す人生は、もちろん経験はないが、さぞかし薔薇色の日々となるにちがいない。もちろん、相手も自分に同じ気持ちを抱いてくれたらという条件はつくのだが。

「パーム・スプリングス」は、タイムループに陥った男女を描いたラブコメディだ。当初、2人は、何度も繰り返される日々を楽しんではいたが、やがてこのタイムループの軛(くびき)から逃れるために、さまざまな行動をとることになる。たぶん人生もやり直すとしたら、3回くらいまでが適当なのではないだろうか、そう思わせる作品でもある。

砂漠の真ん中に開かれたパームスプリングス


物語の舞台は、タイトルともなっている、カリフォルニア州パームスプリングス。ロサンゼルスから車を走らせれば、2時間余りで到着する砂漠の真ん中に開かれたリゾート地だ。地の利もあり、多くのハリウッドスターが、この地に邸宅を構えていた。

筆者も訪れたことがあるが、周囲が砂漠で遮るものが少ないためか、カーラジオから流れるFM放送が、やけにクリアに聞こえていた。素晴らしいゴルフ場も多数あり、アメリカ西海岸の人々にとっては、冬の避寒地でもある。

11月9日、このパームスプリングスの牧場で開かれていた結婚式に、アロハシャツにショートパンツ姿のナイルズ(アンディ・サムバーグ)が現れる。場違いな服装でやって来た彼に、会場はざわつくが、ナイルズは意に介することなく陽気に振る舞う。

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宴もたけなわ、花嫁の姉であるサラ(クリスティン・ミリオティ)が祝福のスピーチに指名されるが、家族のなかで孤立していて、周囲のムードに馴染めない彼女は、マイクに向かうことができない。するとナイルズが代わってマイクを握り、花嫁の感動的なエピソードを披露して、会場の喝采を浴びる。

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窮地を救ってくれたナイルズに興味を抱いたサラは、その夜、彼に誘われ、砂漠で深い関係になりかける。そのとき、どこからともなく矢が飛んできて、ナイルズに突き刺さる。矢は迷彩服の謎の男(J・K・シモンズ)が放ったもので、ナイルズが逃げ出すと、男は近くの洞窟のなかに消えていった。

文=稲垣伸寿

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