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2021.03.31

マイクロソフト、ディスコード買収で「勢い」を生み出せるか

shutter stock

米紙ウォール・ストリート・ジャーナルの報道によると、マイクロソフトはディスコードの買収へ向けて同社と協議を進めている。ディスコードは2015年に創業した音声チャットサービスで、ビデオゲーム愛好家を中心に2億5000万人以上のユーザーを抱えている。

この背景には、音声SNSのClubhouse(クラブハウス)が突如として成功を収めたことがある。クラブハウスはディスコードよりも小規模ながらも急成長を続けており、音声SNS分野の状況を一変させた。

クラブハウスのサクセスストーリーは、ジャンクロード・ラレシェが著書『The Momentum Effect』の中で説明している「モメンタム(勢い)」の定義そのものだ。それによると、スタートアップが勢いを得るためには、一定の運が必要なのに加え、伝えるべき適切なメッセージを特定し、それを非常に優れた方法で実行して、高いコミュニケーションスキルを持つユーザー群へとメッセージを広めなければいけない。そしてこうした初期ユーザーが活性化できるコミュニティーとのつながりを構築し、メッセージを拡散・複製・増強させることで、自社製品・サービスをほぼ至る所で目にするような印象を一定期間にわたり生み出せる。

クラブハウスは、非常に素晴らしい形でこの「勢い」を作り出し、比較的短期間で目覚ましい成長を遂げた。招待制かつiPhoneユーザー限定という特別感を維持する戦略は、起爆剤となった。さらに、ユーザーから提起された初期の問題に対しても、クラブハウスは合理的かつ十分な対応を取った。

だが一方のディスコードは、クラブハウスのような勢いを得ることはなく、ビデオゲーム愛好家という限定されたコミュニティーでのみ成功した。このコミュニティーは量的に重要なものであることは間違いないが、これによりディスコードのバリュープロポジションは特定のセグメント、特定のコミュニケーション目的へと不必要に制限されている。

ディスコードはあらゆる面で、クラブハウスより進化した機能を備えている。テキストメッセージやビデオ通話などの豊富な選択肢があり、利用できるプラットフォームもウィンドウズ、マックOS、アンドロイド、iOS、iPadOS、リナックス、各種ブラウザーと、ほぼすべてに対応している。これは必然的に、長年の積み重ねによるものであり、そのような開発手法が高く評価される環境にあった結果だ。ディスコードは概して、忠誠心の高いユーザー層を抱えている。
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編集=遠藤宗生

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