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2021.04.01 12:30

ANA国際線機内食がネットで30万食以上完売。「非航空事業」模索の現況と行く先

ANAがオンライン販売した冷凍された国際線機内食「まんぷく3種詰め合わせ」:シーフードドリア(画像提供:ANA)

ANAがオンライン販売した冷凍された国際線機内食「まんぷく3種詰め合わせ」:シーフードドリア(画像提供:ANA)

新型コロナウイルスの感染拡大により、自由に長距離移動することが困難になってからはや一年。

一時は感染拡大のスピードも減速気味になり、収束への淡い期待も抱いた。しかし変異種の発見などにより、未だに海外への渡航はおろか国内での移動も最小限に止めることが国より求められ、航空会社は大量の減便を余儀なくされている。そんな中、ANAはこれまでの事業計画を見直し、非航空事業を拡大しようと大きく舵を取り始めた。注目した分野は、「中食」だ。


ノンエア事業の収益は12%、だが──


そもそも、ANAの非航空事業への模索が始まった背景として、これまでANAの主な収益源が航空事業だったことに言及すべきだろう。2018年の個人投資家説明会の資料によると、2014年度の営業実績の内訳が航空事業87%、ノンエア事業(非航空事業)が13%である。また、その時点での2022年度の計画でも航空事業88%、ノンエア事業12%とあるように、ANAの収益の約9割を支えてきた事業は紛れもなく航空事業であることがわかる。

さらに東京オリンピック・パラリンピックの開催に向けて、国際線の路線拡充、それに伴う航空機への投資など航空事業拡大を念頭に置いて事業計画を進めていたことも考えると、新型コロナウイルスによる打撃は想像に容易いだろう。

ANAが感染拡大以前に非航空事業として掲げていたものは、機内販売や独自のECサイトによる物販などの商社事業、ホテル販売やツアーなどの旅行事業など。非航空事業といいつつ旅行関連事業であることに変わりはなく、昨今ダメージが大きい分野の一つであることは言うまでもない。

新しいビジネスを始めるにしても投資する資金もない……。そんなANAが着目したのは、コロナ禍で浮いたリソースと航空会社のノウハウ、そして、コロナ禍下で急成長する「中食」市場だった。

冷凍国際線機内食を「オンライン販売」


その取り組みの一つが、冷凍された国際線機内食をオンライン販売することだ。機内でしか食べられなかった食事が、自宅で体験できる。しかも、温めるだけで食卓に乗せられる「中食」として身近に──。

昨年12月よりANAは、自社のECサイトで国際線の機内食の販売を開始し、想像を上回る人気となった。賞味期限が差し迫ったエコノミークラスの主菜(メインディッシュ)を12食入り7200円(1食あたり600円)で売り出した3種類のパッケージ(「和食」「洋食」「お子様向け」)には、それぞれに3種類のメニューが4食ずつ入っており、飽きることなく楽しめる内容だ。上記の価格は期間限定の特別価格だったため、通常価格は12食入りで9000円となっている点に注意したい。

また現在ではすでに完売となってしまったが、機内でも人気のチキンザンギ丼などの詰め合わせの『よくばり丼ぶりセット』やハンバーグなどボリューミーなメニューを詰め合わせた『まんぷく3種詰め合わせ』など、テーマに合わせた3種類の機内食が販売されていた。

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まんぷく3種詰め合わせ:ビーフハンバーグステーキ(画像提供:ANA)

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まんぷく3種詰め合わせ:鶏もも唐揚げ油淋風ソース(画像提供:ANA)

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まんぷく3種詰め合わせ:シーフードドリア(画像提供:ANA)

今後も、在庫を確保でき次第販売を行っていく予定だ。ECサイトではファーストクラスやビジネスクラスで採用されているワインやANAオリジナルドリンク(かぼすジュース)などの販売も行っているので、機内食と一緒に機内ドリンクサービスも楽しめる。
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文=アステル 編集=石井節子

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