鈴木(続き):生活や孤独感の問題は、コロナ禍の社会全体の問題になっていて、大学生も例外ではないわけですから、精神面のケアは非常に重要です。そのような制度が今までの大学にあったかというと、必ずしもそうではありませんでした。
うちの大学院は100%オンラインですが、オンラインの勉強は孤独だとわかっているので、学生同士の関係を構築できるようなシステムを作っています。例えば、掲示板にレポートを載せたら必ず2人の学生がコメントしてから、教員に提出するような仕組みなど。そういった教育方法上の仕組みもあると良いと思います。
「もう覚えるだけの試験はやめた方が良い」
NO YOUTH NO JAPAN田中舞子(以下、NYNJ田中):この状況が続く中で、テストもやはりオンラインで行われ、不正ができる環境が生まれています。真面目に大学に行って勉強しようと思っている学生ほど、損をしているように感じることもありますが、学生の学ぶ姿勢への影響をどうお考えですか?
鈴木:「真面目にやる人が損をしている」というのは、人と比べて自分はこれだけ努力しているのに評価されないという話なのかもしれないけれど、結局頑張った人が頑張った分だけ身につくというのは間違いない。どんな世の中でも、オンラインになろうがなるまいが、カンニングや不正をして単位を取れればいいと思っている学生もいるわけです。頑張れば頑張るだけのものが身につくわけだから、それでよしと考えた方が良いと思います。
NYNJ田中:そうですね。私の大学でも、教授がそれぞれ工夫してテストを行っていました。先生の大学院では、テストはどのようにされていますか。
鈴木:うちのオンラインの大学院では、そもそもテストで不正ができないようになっています。なぜなら、本人でしか書けない内容を求めるからです。最初からそもそも(テストのために)覚えることはないと伝えています。理解して知識を使えるかどうかは、誰が書いたかでわかってしまうんですよね。だから、僕がこの際言いたいのは、もう覚えるだけの試験はやめた方が良いということです。頭に入っていることをバーッと出すという試験をしてもその人の実力は測れないので、オープンブックや家での試験に対応した問題をちゃんと作るべきです。
オンライン取材で、大学生の疑問に答える鈴木克明教授
オンラインか、対面か
NYNJ田中:先生は、eラーニングを研究していらっしゃいますが、全てオンラインにした方が良いのか、対面と組み合わせる方が良いのか、それぞれのメリットとデメリットを教えてください。
鈴木:オンラインで100%やろうと思えばできるんですよ。オンラインにもリアルタイムとオンデマンドの2種類あるのですが、もっとメリットを生かすとすればオンデマンド型がいいと思います。講義は録画して繰り返し見られるようにしたり、クイズなら自動採点式にして何を間違ったかその場でわかるようにする。そういうものは対面でやろうとするとなかなか大変だけれど、ICTを使うと簡単にできます。
今回のコロナ禍のオンライン化は、リアルタイムのオンライン授業が多かったですね。ですが、オンラインを続けるのであればオンデマンド型を重点的にやるべきです。1人でできることやインプットはオンラインでできます。ただディスカッションとなると、対面でやった方が良いでしょう。リアルタイムとオンデマンドをいかに組み合わせるかという発想でやっていくと、今までの対面授業よりも良いものができます。今それができるっていうことがわかってしまったんだから、授業のスタイルについて学生がもっと要求をしたら良いと思います。