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「文系学部だと就職が不利になる」「文系学部出身者が就いている仕事の多くは20年後にはなくなる」「文系学部は不要だ」──。

大学の学部選びの際、こんな声をよく聞く。文部科学省は、「活力に富み、国際競争力のある大学づくりを目指す」ために国立大学の再編・統合を進め、2015年には国立大学の人文社会科学や教員養成の学部、大学院の規模縮小や統廃合を通達した。これはつまり、活力や国際競争力に人文社会科学は使えない、ということだろうか。

筆者は文学部出身だが、学生時代に「文学部なんだ。食えないね」と言われた記憶がある。自分のやりたいことを学ぶために入るのが大学だとばかり思っていたので、そう言われて目が点になった。その後、就職活動時に企業から送られてくるパンフレットがほかの学部に比べて格段に少ないことを知って、「そうか、これが食えないということか……」と妙に納得した。

では、「使えない」文系学部は本当に不要なのだろうか? そもそも学問って何なのだろうか? わが子の進路選択から「文系」は排除すべきなのか? 元文部科学省事務次官で、40年近く日本の教育現場に携わり、その現状や実情に詳しい前川喜平氏に話をうかがった。


本来、学問はGDPの向上になんかつながらない


「本来、学問というものは役に立たないものなんです」と前川氏は言う。

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前川喜平氏

「『役に立つ』というのは言い換えると『お金になる』ということ。たとえば、学問のはじまりともいえる哲学は、はっきり言ってGDPの向上にはつながりません。

去年亡くなられた小柴昌俊さんは、「ニュートリノ」という存在を確認して、2002年にノーベル物理学賞を受賞しました。その後、小柴さんのお弟子さんで、現日本学術会議会長の梶田隆章さんはニュートリノの研究をさらに進め、2015年にノーベル物理学賞を受賞しました。

おふたりの功績は学問の世界では非常に大きかったけれど、これがGDPに結びつき、新しい経済を起こすイノベーションになるか? と言えば、まったくなりません」

実際、小柴氏自身も「あなたの研究は何の役に立つのでしょう?」という記者からの質問に対し、「何の役にも立ちません」と答えている。

「たまたま役に立つことはあるかもしれないけれど、役に立つために研究しているわけではない。役に立たないものでも学問になるのです」と前川氏は言う。

「人間に役立つことをお金に換算して評価するのが今の資本主義社会ですが、学問は本来人間の真理を追究するもの。『世の中、社会、宇宙、人間はどうなっているの?』という純粋な知的欲求に基づいているものです。ニュートンが万有引力の法則、ピタゴラスがピタゴラスの定理を見つけたように、人類は真理を求める営みの中から世の中の法則を見つけてきたのです」

取材・文=柴田恵理 編集=石井節子

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