10年で価格が100倍に カウズという「アートの顔をしていないアート」の魅力

ロサンゼルス市内に設置されたカウズ(KAWS)の作品(AaronP/Bauer-Griffin/Getty Images)


当時はファッションだけでなく、キャラクターのカウズ版フィギュアも発売されていた。スヌーピーとウッドストックや鉄腕アトム、ピノキオ、スターウォーズなどさまざまなキャラクターで、目がバッテンのカウズ版が多く販売されていた。
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なかでも2010年にオリジナルフェイクで販売された、カウズ版の「ピノキオ」という作品は、26cmの高さのビニール製フィギアにペイントしたもので、エディション(製作された数)は500だ。

一見するとおもちゃのように見えるが、「アート」として売られたもので、価格は、相棒であるジミニー・クリケットのフィギュアとセットで1万7640円だった。この作品が、それ以後「アートトイズ」というカテゴリーを生み出していくこととなる。

この「ピノキオ」が2014年10月にフランスでオークションに出品されると、1375ドル(約14万円)で落札された。2020年10月には、同じくフランスでのオークションで、1万5693ドル(約164万円)で落札されている。製作年が2010年なので、10年で約100倍になったということだ。これが「資産性が伴うアート」ということになる。
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カウズは、ストリート系、いわゆるグラフィティのアーティストと呼ばれる。前回、バンクシーで説明したが、グラフィティは「アートが趣味な人」を対象にしていないので、わかりやすさが重要である。カウズも然りだ。

サブバータイジングで作品への注目度を高める


カウズのもうひとつの特徴的作品に、「サブバータイジング」と呼ばれるものがある。

欧米では以前から、バス停の待合場所や公衆電話ボックスなどに、ラグジュアリーブランドなどが広告を出している。最近は都内でも、デザイナーがエディ・スリマンに変わったセリーヌが、表参道や六本木などのバス停に広告を出しているのを見かけた。カウズは、このような広告に、自らのキャラクターであるコンパニオン等をコラボさせる作品をつくっている。

当時では、例えば、カルバン・クラインなどのファッション広告では、モデルとなっているスーパーモデルにカウズのキャラクターを描き込み、サブバータイジングを展開している。


カルバン・クラインの広告では、モデルと共にカウズのキャラクターが描きこまれている(Getty Images)

作品は、それぞれのブランドや製品と絡むことでメッセージを発信しているが、広告というアイキャッチが重要な媒体に乗っかることで、自らの作品への注目度は、作品を単独で展開するよりも強くなる。

また、ファッションとの親和性をイメージとして定着できることが、その後のさまざまなブランドとのコラボにもつながっているのではないだろうか。つまりは、自己プロデュースもアーティストの才能であるということだ。
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文=高橋邦忠

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