この記事では、今すぐ行動を起こすべき論拠を述べたい。
なぜ、海外進出を先送りしようとするのか?
危機的状況では、既存のつながりが断裂することが多い。企業とサプライヤーとの関係に支障が出て、顧客も支出を控えるために、慣れ親しんだ商品やサービスに代わるものを探し始める。
労働市場も不安定になる。危機下では、企業に一時解雇された人材が市場に出てくるため、従来なら採用が難しい人材でも安価な給与で手に入る可能性がある。
景気の先行きが読めない中、競合企業は弱体化していく。つまり、商品コストを抑えるなどの戦略をうまく活用すれば、優位性が得られるということだ。
残念ながら、私が接してきた中で、このチャンスに気づいている経営者はほとんどいない。状況が上向くまで国外進出を先送りしたがるのだ。彼らは基本的に、物流面の問題を不安視している。たとえば、アメリカのビザの取得が難しいかもしれない、といった不安だ。
私は、物流は大きな問題にならないと思う。実のところ、たとえばロシア企業の国外進出がうまくいかないのは、まったく別の要因によるところが多い。それは経営面での過ちだ。ここでは、我々の同胞が国外市場に打って出る際に犯しがちな過ちを5つ紹介する。
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しかし、やみくもに進出しようとはするな
グローバル市場では、十分に系統立てた戦略に基づいて行動しなければならない。戦略には、4つの段階が必要だ。
・新たな市場をくまなく調査した上で、仮説を立てる。
・次に、その仮説を検証する。
・次に、事業拡大の機会を待つ。
・最後に、全社を挙げて事業拡大を進めることで、会社の成長を加速させる。
この順序を無視したり、いずれかの段階を省いたりすると、大失敗につながる。たとえば、新たな市場の細部や落とし穴を十分理解しないまま、自信満々で「戦ってみればわかる」という精神で参入しようとするベンチャー企業がその一例だ。必要なデータは、事前に調査すれば得られる。顧客になりそうな相手も、その相手が困っていることも、競合企業の数や取り組みも、調査によってはっきり見えてくるのだ。調査しなければ、不正確な仮説しか立てられず、誤った道へと進んで途方に暮れることになりかねない。
全部自分でわかるはずという決めつけや、支出を抑えたいという思いから、現地の専門家の助けを借りようとしないことも、わが同胞が犯しがちな過ちだ。たとえばロシア市場と国外市場との差異はたくさんあるが、それはロシアの起業家には(国内の類似市場を徹底的に学んだ起業家だとしても)わからない。重大な差異を指摘してくれる専門家の助けを借りないのは、自分から時間とお金を捨てに行くようなものだ。