東京五輪の経済効果、中止でも「影響は限定的」と言える理由


経済効果と同様、株価も2019年にピーク?


次に、日本の株価への影響を考えたい。1984年以降の夏季オリンピックを対象に開催国の株価騰落率を振り返ると、オリンピック開催前年の上昇率が+30%、開催当年が+11%、そして開催翌年が+15%と開催前年が最も高い。この株価推移を東京オリンピックに当てはめると、企業業績の先行きを織り込む株価の上昇率は「経済効果と同様にすでに2019年にピークを迎えていた可能性が高い」と、永濱氏は分析する。

「インフラ整備もそうですが、株価は先を見通して動きます。特に東京オリンピックでは、建設やセメント、住宅・不動産、観光、家電などの業種の恩恵が大きいとみられていますが、競技場や選手村など施設整備の多くはすでに関連業種の収益が実現済みで、株価にとっても消化済みである可能性が高いです」

東京五輪 国立競技場
メインスタジアムとなる新国立競技場は2019年に完成。地上5階、地下2階があり、約6万人を収容可能(Getty Images)

もし中止となれば、オリンピック後の再開発への悪影響や、ホテルや一部の商業施設の需要増加が失われ、株価への悪影響が生じる可能性が高い。特にメディア関連では、これまでマーケティングパートナーとしてスポンサー募集に従事し、広告代理店などでは直接的に東京オリンピックの増収効果を受けることになるため、中止となれば期待収益への悪影響は避けられない。

ただ、日本の株式市場全体で考えれば、日本株は米国株と連動しているため、日本経済の影響を受けるのは限定的だという。永濱氏は「日本の上場企業の多くがグローバル展開していますし、売買の6割以上は外国人投資家が占めています。東京オリンピックの中止自体は関連業種を中心に株価にとって悪材料となりますが、株価全体でみれば、オリンピックがあるなしに関わらず、可否が決まる時点での先行きの世界経済の見通しによって大きく左右されるでしょう」と予測する。

(この記事は第一生命経済研究所の永濱利廣氏のレポートを元に取材し、記事を構成しています)

構成=督あかり

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