サステナブルであることを考えると、地球に優しいからといってユーザーに我慢を強いるのでは意味がない。ボルボでは今回、画期的な販売方法を選んでいる。100%オンラインでの購入ができる上、サブスクリプション販売としている。
「最先端のテクノロジーに気軽にアクセスして欲しいと思っていますが、新しいものを試すにはいくつかの課題もあります。例えば、日本では、補助金を使ってEVを購入すると、4年間は手放せないなどの縛りがある上に、中古車価格が心配というユーザーも多くいらっしゃいます。さらに、若い方がクルマに乗ろうとすると、保険料が高いという課題もあります。
ボルボでは今回、日本で初めてのEVの販売にあたって、100%オンラインでの販売、契約から3カ月以降はいつでもキャンセル可能というサブスクリプション販売を設定しました。これは、保険やメインテナンスまで『含めた』価格ですので、誰もが気軽にかつ安心して、持続可能なモビリティを体験していただけます」
100%オンライン販売といっても、納車やメインテナンスなどは、ボルボから紹介された最寄りのディーラーが対応してくれるので安心だ。日本に上陸するEV専用モデル「C40」はまず100台だが、順次導入を進めるという。既存モデルでも、欧州ではサブスクリプション販売が人気で、90%の顧客、なかでも若い世代がサブスクを選択しているという。
最後にGAFAMに並べられるITジャイアントの動向をどう見ているか? 訊いてみた。
「テック・インダストリーの素早い動きは、自動車産業が覚醒するための警鐘として非常に有効ですし、市場への喚起になると考えています。ビジネスの展開するスピードがとにかく早く、このままでは自動車産業は恐竜のように死に絶えるしかありません。自動車産業はこれまでハードウェアの視点から、テクノロジーを磨くことに注力してきました。これからは、顧客中心の考えで、柔軟かつ俊敏に変化していくべきです」
実のところ、ボルボは決して大きな自動車メーカーではないが、これまでにも、自動車産業への警鐘を鳴らしてきた自動車メーカーである。初期には、自動車の衝突安全の改善を訴え、独自に開発した3点式シートベルトの特許を開放し、今では世界中の自動車が採用しているまでに広がった。排ガスを綺麗にする三元触媒についても、同じく特許を公開している。
近年では、スウェーデン政府が推進する交通事故死亡者ゼロのコンセプトを受けて、ボルボのモデルに乗る人の事故死亡者についても、自動車メーカーとしては異例の「ゼロ」という数字を公言して、本気でボルボに乗る人の交通事故死亡者をゼロにしようと取り組んでいる。
私たち自動車ジャーナリストも、ついスペックやハンドリングといった乗り味で、クルマを語りがちだったが、これからはサステナビリティもクルマを語る軸に加えていくべきだろう。