今回のボルボのように企業としての社会責任を果たす姿勢は、日本ではまだ浸透していないが、世界基準で見れば当然の流れだ。 ボルボがこうした決断をした背景にあるのは、ソーシャルグッドではない企業は生き残れない時代になってきているという点だ。
近年、よく耳にするようになったSDGs(持続可能な開発目標)の観点に基づいて考えると、株主価値の向上と持続可能性、社会責任は切り離せない時代になってきている。例えば、2020年9月の世界経済フォーラムでも、「ガバナンス」「地球環境」「従業員」「持続的成長」といったいった4項目、計21の指標の開示を言及している。これにより、非財務情報の開示が進み、ESG(Environment, Social, Governance)投資が推進されることは明らかだ。
事実として、日本市場におけるPHVのシェアの10%をすでにボルボが獲得している。前述の通り、すべてのモデルで48Vハイブリッド機構を含む電動化を実施し、ユーザーの多くが電動モビリティでのドライブを経験しつつある中、その体験を礎にEVのユーザーへと移行してほしいという目論見がある。
実際、欧州では2020年にコロナ禍において自動車の販売台数が5%も減速する中、EVのシェアは6%増と、非線形で高まっている。パーソンは言う。
「欧州では、アーリーアダプターがEVのユーザーになり、その後も急速に普及しつつあります。欧州の自動車市場全体が2030年までに100%ピュアEVになるということはありませんが、プレミアムセグメントにおけるEVの普及は、より早いと考えています。
例えば、スウェーデンでは、ショッピングモールで充電できることに加えて、急速充電のインフラも整備されつつありますし、購入インセンティブも設定されています。加えて、フリーパーキングのようなお金以外のインセンティブも重要です。日本は、政府によるEV利用者への後押しが鮮明ではない分、2025年の段階では、欧州よりEVの普及が遅れるとは考えていますが、全体の戦略は変わりません。
従来、事故ゼロを目指した『ヴィジョン2020セーフティ』という交通安全にいての取り組みを行ってきました。高い目標を掲げて、その実現に向かって戦略を持って邁進するという点では、今回の電動化によるサステナビリティ戦略も、社会課題の解決に向けた幅広い取り組みとしてつながっていると捉えています」
ボルボ・カー・ジャパン 代表取締役社長 マーティン・パーソン/同社の前身であるボルボ・ジャパン以降、スウェーデン本社での重要なポジションに加えロシアでは社長を勤めるなど、重要なポストを歴任。日本でもその手腕に期待が集まる。
ただ、日本国内に目を向けると、サステナビリティへの意識は欧州ほど浸透していない。地球環境問題という課題解決に貢献できるか否かの意識の差も歴然だ。そんな中で、あえて、2030年には100%をEVにするというのは、いささかアグレッシブな目標に思える。
「私は、以前にも日本市場に関わったことがあり、その当時、日本のお客様がEVについてコストパフォーマンスを気にされていたことを記憶しています。震災後は電力ミックスにおけるCO2排出量の課題があることも存じ上げています。しかしながら、日本でもそろそろ、クルマも地球環境へのインパクトの視点で語られるべきだと考えています。近い将来、電源ミックスまで遡って、再生可能エネルギーなどの提携も視野に入れています」