花見とコロナと経済損失 そもそも「経済効果」とはなにか?

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経済効果の算出方法


しかし、そうなると算出するのが複雑で難しそうだと思うかもしれない。そのような時に活用して欲しいのが「産業関連表」だ。

産業連関表とは、総務省が中心となって、1年のうちに各産業や消費者の間でモノやサービスがどのように生産され、販売されたのかということをまとめたものだ。5年ごとに作成されるものなので、最新の産業関連表は2015年のものになる。

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出所:総務省「平成27年(2015年)産業連関表 結果の概要」より

上の表の縦軸を見てみよう。たとえば野菜をつくるとなれば、肥料や農薬が必要だし、場合によっては燃料も必要となる。このような中間投入(D)と、農家の人たちが得る所得と農業で発生する利益などが粗付加価値(E)となる。

一方で、横軸を見てみると、中間需要(A)というのは、消費者に届くまでに経由する業者を考えればいい。たとえば、野菜加工業者に売られ、そこで加工された野菜が飲食店で売られるというようにだ。

このような表を基に経済効果を考えていくのだが、細かく実際の数字を使って計算すると面倒なため、実際には産業関連表とともに公表されている「逆行列計数表」を活用する。

これは非常に簡単なもので、仮にこの野菜事業の影響を受ける業界が野菜業界とその他産業だけとする。野菜業界なら1.5、その他産業では0.5といった具合で各関連産業に数字が用意されている。たとえばこの野菜事業に10億円の需要が発生したとすれば、10億円×1.5+10億円×0.5で計20億円となり、経済効果は20億円に膨らむということになる。

もっと手軽に計算するには


いつも手元に産業関連表があるわけではないので、もっと手軽に計算する簡易な方法も紹介しよう。

たとえば、昨年4月、東京都、神奈川県、千葉県、埼玉県、大阪府、兵庫県、福岡県の7都府県に1カ月の緊急事態宣言が発出されるという報道があった。この時も実は、学生とどれくらいの経済損失が発生するかという話をしたが、その時は手元に何も資料がなかったため、簡易方法で概算してみた。

内閣府が県民経済計算という資料を発表しており、最新版には2017年度の各都道府県の実質GDP(物価の変動を調整した国内総生産)が記されている。

実質GDPが日本全体で545.5兆円であるのに対し、上記の7都府県が占める割合は48%である。日本のGDPのうち約6割が消費であるから、545.5兆円の6割のうち48%となると157兆円。これは1年間の数字なので、緊急事態宣言が1カ月であれば、さらに12で割ると13.1兆円。

緊急事態宣言の影響で1日のうち、0時から20時までの20時間は消費が3割減になり、20時から24時までの4時間の消費は半減すると仮定すると、13.1兆円×5/6×0.7+13.1兆円×1/6×0.5=8.7兆円。通常であれば13.1兆円の消費があるのに8.7兆円しか消費がなくなるということなので、ざっくり4.4兆円ぐらいの経済損失が発生するという概算になるのだ。
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文=森永康平

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