新:歌舞伎町論

かつて新宿にあった「ブライアンバー」

クラブハウスという音声のみのSNSが話題だ。

私も時々だが、使っている。そんな中で感じたクラブハウスでのおしゃべりのパターンが、最近読んだ、平田オリザさんの『演劇入門』(講談社現代新書)という本と物凄く親和性があった。

『演劇入門』に書かれている「話し言葉の分類」をふまえ、この緊急事態宣言下でクラブハウスに集まる人々の渇望しているものは飲み屋なのではないか、という仮説を考えてみたいと思う。


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『演劇入門』では、演劇の要となる「話し言葉」をいくつかに分類する。その中でも特に重要なものとして、「演説」「会話」「対話」について説明がなされていた。

“演説というのは、『政治家』なんかがよく行うもの(後略)。『対話』(dialog)とは、他人と交わす新たな情報交換や交流のことである。他人といっても、必ずしも初対面である必要はない。お互いに相手のことをよく知らない、未知の人物という程度の意味である。一方、『会話』(conversation)とは、すでに知り合っている者同士の楽しいお喋りのことである。家族、職場、学校での、いわゆる『日常会話』がこれにあたる” ──『演劇入門』より

つまり、「演説」は誰かが一方的に話すスピーチだ。「会話」は知り合い同士の日常会話。「対話」はお互いによく知らない他人と交わす、新たな情報交換や交流ということだ。

以上の分類を踏まえて、クラブハウスで起きている状況を、「演説パターン」「会話パターン」「対話パターン」の3つに分けてみた。

「対話パターン」が魅力的な理由


「演説パターン」は、YouTubeなどでライブ配信をしてきた人や有名人が、沢山の観衆に向けて一方的に話すもの。これは既視感があるし、アメリカでも最も多い利用法と聞いた。

「会話パターン」は、参加者同士の軽いおしゃべりだ。さらに分けると、有名人のおしゃべりと、一般の方々のおしゃべりに分類できる。有名人同士のおしゃべりは、こちらもその方々の情報をある程度知っている状態で、プライベートのような内容を聞く。

ファンクラブの延長線上として需要があると思う。一般の方々の部屋でも、起きていることは基本的に同じだ。ただ、スピーカーについての事前情報がない状態であるので全く理解できない会話が多いだろう。勇気をだして、スピーカーよりもリスナーが少ないところで身内の会話を聞いているのは、堂々と喫茶店で隣の会話を聞いているような初めての体験になる。

文=手塚マキ

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