日本では「一人勝ち(勝者総取り)」を追求すると、冷ややかな目で見られるのが常でした。むしろ、社会の持続可能な繁栄には、ハーモニー・協調性が欠かせないと考えられていました。こうした思考の背景には、地理的に孤立し、稲作文化であった歴史もあります。島国で、天然資源が限られているため、生き残るには共有しなければならなかったといった要素もあったと考えられます。
しかし、現代の世界では、このハーモニーという素晴らしい特性が、むしろ必要とされている劇的な変革を妨げる原因となっているのではないかと思うことが多々あります。
世界の状況を鑑みると、日本では変革に時間がかかると感じずにはいられません。数十年にもわたって議論されてきた課題、特に仕事に対する時代錯誤のアプローチや、ジェンダーパリティ(ジェンダー公正)の欠如などの問題が未解決のまま、そのままにされているように思います。結果、経済成長が停滞しているのではないでしょうか。
年功序列や終身雇用を好む傾向が根強く残る日本の組織では、変化を嫌う傾向が見られ、特に海外諸国と比較すると、こうした傾向にかなり束縛されているようです。これはビジネスの世界でも同じことです。
経営者は、終身雇用や年功序列を信じて一生懸命働いてきた従業員に対する責任感や気遣いを感じるからこそ、劇的な変革を躊躇することがあります。労働政策も、企業の売却やリストラが進み、労働力が流動的になっているにもかかわらず、時代の流れに追いついていません。雇用を維持するためには、伝統的な構造を維持しなければならないという同調圧力もいまだに存在するため、進歩が妨げられています。
また、この数十年間、日本におけるジェンダー・ギャップの解消には、進歩があまり見られてません。世界経済フォーラムの「ジェンダー・ギャップレポート2020」では、日本の順位は153カ国中121位でした。
元・経済同友会副代表幹事であり、現在は世界経済フォーラムのグローバル・フューチャー・カウンシルズ(GFC on Japan)のメンバーである小林いずみ氏は、「企業のトップが『女性の幹部登用には5年はかかる』とよく言いますが、こうした発言から、実力ではなく、年齢や在職期間に応じた昇進制度であることがわかります」と、コメントしています。