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2021.02.16

ツイッターと音楽業界の「著作権バトル」が加熱する可能性

Photo by Marten Bjork on Unsplash

音楽業界にとって、UGCと呼ばれる一般ユーザーが生み出すコンテンツ(User Generated Content)は諸刃の剣だ。UGCは音楽ビデオや楽曲がバイラルで拡散するのを助け、コンテンツの売上の増加を促進することになる。しかし、UGCは海賊版の一種でもあり、それを管理するためのリソースが必要になる。

主要なSNSプラットフォームは通常、UGCのライセンス違反に対処するためのシステムを備えているが、ツイッターにはそれが存在しない。

ほとんどの人はツイッターをテキストのみのプラットフォームと考えているが、実際には動画の利用も増加しており、それに連動してUGCや無許諾の音楽コンテンツなどの問題が発生している。

ビルボードによると、全米レコード協会(RIAA)のCEOのミッチ・グレイザーは12月に米上院知的財産小委員会で証言し、過去2年間でツイッターに対し、音楽著作権管理者から送られた、著作権違反の通知が300万件以上に達したと述べたという(ツイッター側は、もっと少ない件数だと主張している)。

ツイッターは、ユーチューブやフェイスブックが導入したコンテンツIDのような著作権違反を検知するシステムを備えておらず、RIAAはツイッターに対し、問題コンテンツの検索を効率化するためにAPIへのアクセスを求めたという。しかし、ツイッター側は、それを可能にするためには、年間10万ドルの費用がかかると回答した。

RIAAがこの費用負担に応じる可能性はほとんど無いだろう。ツイッターに10万ドルを支払えば、他のSNSプラットフォームも同様の取り引きを求める可能性があるからだ。しかし、問題の本質はそこではない。

ツイッターは、なるべくコスト負担が生じない方法で、音楽業界からの追及をかわそうとしているのかもしれない。同社はこれまで音楽業界と契約を結んでおらず、それを避けたがっている。なぜなら、音楽や動画コンテンツは、彼らのプラットフォーム上でさほど大きなボリュームではないからだ。

今後の戦いの火種になる可能性


ツイッターは、音楽業界への10万ドルの要求を撤回するのと引き換えに、音楽業界から彼らに有利な条件を引き出すかもしれない。10万ドルという金額は、楽曲のライセンス費用と比較するとわずかなもので、彼らは少しの損で多くを得ることになる。

動画はツイッターにとっても成長が期待できる分野であり、やや停滞気味のユーザー数を増加させるために、将来的にこの分野への注力を決定する可能性もある。しかし、音楽に関してはTikTokやユーチューブ、インスタグラムらが主要なプラットフォームとなっており、ツイッターがここに参入するのはまだ先のことになりそうだ。

結局のところ、ツイッターにとって最善のアプローチは当面の間、音楽業界からの追及を交わしつつ、様子見のスタンスをとることだろう。ツイッターは高額な音楽ライセンス費用の支払いを避けたいし、コンテンツIDシステムの開発は大きな負担になるからだ。

一方で音楽業界としては、ツイッターがライセンシング契約に応じれば、多少の著作権侵害には目をつぶるが、このまま何の合意も得られないままであれば、ツイッターに対しさらなる闘争をしかける可能性もある。

編集=上田裕資

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