しかし、ビジネスというのはたいてい、他と根本的に異なるため、この分け方ではそれこそ「リンゴとオレンジを比べる」くらい無意味な比較になってしまうことが多々あります。
企業はそれぞれ違った速さで成長し、資金調達面でも異なるニーズに直面します。
例えば、ディープテック系のスタートアップの中には、プロダクト開発を継続するためにより多くのエンジニアの採用が必要となり、シリーズAで大型の資金調達を行わなければならない企業もあります。
また、レガシー業界のスタートアップでは、ライセンス認可や、様々な規制上の要件を満たすために通常より多くの資金が必要となるケースもあります。
このように各企業の状況はそれぞれ根本的に違っているので、資金調達ラウンド別に比較した場合、その企業に対する誤った認識につながる可能性が高くなります。
ですので、私はスタートアップを以下のステージに分けて考えるようにしています。
プロダクト構築ステージ
プロダクト(もしくはサービス)構築ステージはその名の通りのステージで、なんらかのニーズに応える有望なプロダクトを作るために創業チームが創意工夫を重ねる段階です。
このステージでのCEOの主な仕事は、初期チームのメンバーを集めること、最初のプロダクトを開発すること、そして市場の動向や顧客ニーズを調査することです。
「Minimum Viable Product(MVP)」を作るという話が出てくるのもこのステージです。Minimum Viable Productは「最小限の実用性があるプロダクト」という意味で、顧客に実際に使ってもらう(そしてできれば買ってもらいたい)プロダクトの最初のバージョンのことです。この初期バージョンを通して、具体的に何を作るのか、それが誰に最も必要とされているのかを分析することが重要になります。
また、このステージで鍵となるもう1つの用語が、「プロダクト・マーケット・フィット(PMF)」です。PMFに到達するということは、つまり顧客のバーニング・ニーズ(切実なニーズ)に応えるプロダクトにたどり着き、それを確認できたということです。
PMFについてはすでに多くのサイトで解説されているので、ここでの詳しい説明は省きます。とにかく、PMFの定義自体はやや曖昧ではありますが、このステージではそのPMFの達成が一番の目標となるのです。