この考え方に照らせば、2020年のジェットコースターのような相場は、投資に好機を与えてくれるものでした。特に、新型コロナウイルスの影響によりパニック状態に陥った2月と3月は、投資においては典型的な「狩場」でした。
この時期、過去に類を見ない急激な暴落が起き(世界の株式市場が34%の下落を記録)、金融関連の報道記事は悲観論で埋め尽くされました。ウォール・ストリート・ジャーナルは、2月から3月の7週間のうちに、800件の記事のなかで「恐怖」という言葉を使用しています。これは1日当たり16回の「恐怖」が報道されたということになります。
この状況に対し、3月23日に、米連邦準備制度理事会(FRB)が、市場の円滑な機能を支えるために必要な資金を供給すると発表しました。すると、過去に例のない急激な暴落に喘いだ株式市場が、今度は、空前の急回復に沸きました。そして結局、株式市場インデックスは、2020年通年で16%ものリターンを実現しました。
割高感が強いと考えられる銘柄
しかし、2020年の単年で見て何らかの結論を導き出すのは、近視眼的と言わざるを得ません。債券利回りは記録的な低水準にまで落ち込んでおり、株式に代わる良い投資先はほとんどなく、そのことが株式のバリュエーション(評価倍率)の上昇を支えてきました。S&P500をはじめとする、ほとんどすべての株価指数からみて、バリュエーションは過去最高かそれに近い水準となっています。
そんななかで、割高な銘柄がさらに高くなるという現象が起きています。下の図は、割安な銘柄と割高な銘柄の予想リターンの差を、各企業の過去のファンダメンタルズとバリュエーションに基づき示したものです。
黒の実線が低水準にあるときは、割安株が割高株よりごくわずか安いだけであり、所謂クオリティ銘柄を買うのに適したタイミングです。この線が高水準にあるときは、割安株のほうがはるかに魅力的となります。
ファンダメンタルズからみて割安な株と割高な株のバリュエーション格差は極めて大きい
FTSEワールド・インデックスの株式をファンダメンタルズからみて割安な銘柄と割高な銘柄に二分したときのそれぞれの予想リターンの差、およびその後のオービス・グローバル・エクイティ運用戦略のインデックス比相対リターン
出典:ワールドスコープ、オービス
リターンは内部固有モデルを用いた推定です。銘柄は予想リターンに基づいて順位付けられています。オービス・グローバルの相対リターンは、本運用戦略に含まれる全ての株式クラスの運用報酬控除後リターンを資産残高でウェイト付けしたものを使用して算出されており、個別の株式クラスのリターンとは異なることがあります
この予想リターンの差は、2014年以降、どんどん広がっていき、ついには史上最大の乖離幅にまで拡大しました。私たちのオービス・インベストメンツ(Orbis Investments)では2020年初めの時点で、既にこの差が極端に大きいと認識していましたが、その後バリュエーションはさらに極端になっていきました。9月には、この格差は過去最大を記録しました。