これは、前段で申し上げた「辛抱強く」という点と一見矛盾するようですが、実は全く矛盾しません。なぜなら、「本源的価値の査定が正しいという確信が維持される場合には辛抱。誤ったと判断した場合には一刻も早く投資判断を変更」という整理だからです。「長期投資」といっても、長期で投資することが目的化して判断を鈍らせてしまっては、より高い投資リターンを志向するうえでは本質から乖離するのではないかと考えます。
理論的な話に終始するのもどうかと思いますので、私たちオービス・インベストメンツが割安感を見出している例を1つ挙げておきましょう。BMWです。株価が低迷することに相応の理由が認められる多くの企業とは異なり、BMWは、その価値が不当に見過ごされているように私たちには映ります。
BMWには、高級ブランドとしてのポジショニングを原動力として、魅力的なリターンとともに長年成長し続けてきた歴史があります。現在の株価は、この歴史が終焉を迎えることが前提となっているような水準にあります。
しかし、BMWは10年以上かけて電気自動車への移行に備えてきました。2021年には、電気自動車とプラグイン・ハイブリッド車を20車種販売する予定で、各工場で少なくともその1車種を生産できる能力を確保します。そして、こういった車種の売れ行きは、目下好調です。現在、BMWの電気自動車市場におけるシェアは、その他の車種も含めた全体のシェアよりも高くなっています。さらに、実は2020年におけるBMWの電気自動車販売台数の伸びはテスラを上回っているのです。
先行き不透明な部分はありますが、我々はBMWを選好することによってリターンを得られるものと考えています。現在、BMWの株価は1株当たり純資産の1.0倍未満、1株当たり平準化利益の約6倍です。BMWに対する評価(バリュエーション・マルチプル)がここまで低水準に落ち込んだのは、過去に一度しかありません。それは、あの世界金融危機のときでした。
高いリターンをあげる投資の種は、往々にして一見愚かにみえるようなところにあったりします。世の中の趨勢や周囲の声に惑わされず自分の頭で考えることが、投資にとっては重要です。
(上記は私たちオービス・インベストメンツの考え方であり、投資をする際にはご自身での判断をお願いします)
連載:「正道投資でつくる私たちの未来」
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