オービス・インベストメンツとして特に割高感が強いと考えている銘柄の例を挙げておきましょう。例えば、テスラ(Tesla)やその類似企業、Zoomのようなロックダウンの恩恵を受ける企業、「何々aaS」(何々 as a Service)と言われるクラウドサービスを提供する企業などがそれに当たります。
これらの銘柄には、2000年のITバブルを思い起こさせる投機的バブルの徴候が見てとれます。その他、株式公開当日に株価が急騰したSnowflake、Airbnb、あるいはフードデリバリーのDoorDashのような銘柄、企業価値売上高倍率が20倍以上で日本の合計株式時価総額をも上回る時価総額で取引される銘柄、これらも割高感が強いと考えられます。また、記録的な金額を資金調達する「特別買収目的会社」という空箱、さらにはコール・オプションを使って投機する個人投資家、といった例もあります。
なぜこんなに株価が高騰するのでしょうか。その背景にあるのは、「欲」と「不安」だと考えます。お金を失う恐怖よりも、投資機会を逃す恐怖のほうが勝っていると、こういったことが起こります。
不当に価値が見過ごされている銘柄
それでは逆に、割安とは何でしょうか。私は「企業の本源的価値に対して低い株価で取引されている状態」だと考えます。本源的価値を換言するならば、賢明な人物が当該企業の取得に支払うであろう価額です。そして、株価は最終的に本源的価値を反映すると考えます。
ただ、「割安株投資」は、言うは易く行うは難しです。その理由を2つだけ例示します。
まず、株価が本源的価値を反映する(投資リターンが実現する)タイミングを予想するのは、ほぼ不可能であるという点です。一時的であれ、割安な株価になるのには一定の理由があり、その理由が解消して本来の実力が正当に評価されるまでには、往々にして時間がかかるもの。それどころか、買った後に更に株価が下がることもよくあります。投資機会に対し、長期的な視点で辛抱強く取り組む必要があるのです。更に言えば、本源的価値の査定に誤りがなければ、株価の一層の下落は、むしろ投資魅力度の増大を示すものであり、売却どころか追加投資することになります。
次に、銘柄選択において、非常に優秀なアナリストでも、勝ち銘柄の割合はせいぜい50%強であることです。たとえば、「投資の神様」と呼ばれるウォーレン・バフェットは、創業から50年間で年率19.4%もの複利リターンを実現しています。これは、同期間に投資資産を7000倍以上に増やした計算です。つまり、もし皆さんがバフェットの創業時に3万円を預けていたら、それを2億1000万円以上に増やしてくれた(つまり、それだけで一般的な平均生涯年収一丁上がりです)、という計算です。
しかし、そのバフェットですら、ベンチマークに対する銘柄ベースの勝率はせいぜい50%強~60%と言われています。つまり、半分近くの銘柄で、投資判断を誤ったわけです(裏を返すと、半分近くが負け銘柄になってしまっても、驚異的なリターン創出が可能ということでもあります)。
これが現実であり、本源的価値の査定に誤りがないかどうか常に謙虚に反省を繰り返し、誤ったと判断したらすぐに投資判断を変える必要があります。