元日本代表松井大輔が40歳でベトナムへ移籍。衰えぬサッカー愛とオーナーとの出会い

Getty images/Fred Marvaux

華麗なドリブラーとして日本代表でも活躍したMF松井大輔が、ベトナムの地で新たな挑戦をスタートさせた。

J1の横浜FCからベトナム1部リーグのサイゴンFCへの移籍を電撃的に発表し、ファン・サポーターを驚かせたのが2020年12月。移籍が珍しくないサッカー界だが、40歳になるシーズンに日本を含め6カ国目、延べ13番目のクラブへ新天地を求める稀有な決断を後押ししたのは何か。フランスやロシア、東欧諸国に続いて東南アジアと、言葉や文化、風習のすべてが異なる国々への移籍を、ポジティブな姿勢ともに繰り返してきたベテランの思考回路を追った。

不惑の歳に、戦いの舞台を再び海外へ求めた。新天地はヨーロッパでも南米でもない。アジアでも日本人にほとんど馴染みのないベトナムの地で、松井大輔はこの上ない充実感を覚えている。

先月19日に更新された彼の公式インスタグラム(@matsuidaisuke_official)に、エースの証となる「10番」を背負い、左腕にはキャプテンマークを巻いた自身のプレー写真を2枚投稿。サイゴンFCの一員として臨んだ17日のベトナム1部リーグの開幕戦勝利を報告している。

「シーズン開幕。スタジアムは満員。日本人応援団の皆様来てくださってありがとうございました。まだ2週間しか練習できてないので体が出来上がってませんが今からあげていきます。勝利」


松井のもとに、「耳を疑うほど驚いた」と振り返るサイゴンからのオファーが届いたのは、J1リーグが大詰めを迎えていた昨年11月中旬だった。

「まさかもう一度、海外へ行けるとは考えていなかったので。ただ、サイゴンとの話し合いのなかで、コロナ禍でもベトナムが経済的にものすごく発展していることや、ベトナムやタイを中心とした東南アジアでサッカー人気が盛り上がっていること、そしてオーナーがこれからの明確なビジョンをしっかりと伝えてくれたので、そこからはトントン拍子でサイゴンへ行くと決めました」

サイゴンへの移籍を決めた理由をこう話す松井。最も彼を突き動かしたのが、今年からオーナー兼会長となったチャン・ホア・ビン氏の存在だった。オーナーだった昨年をビン氏はサイゴンへの先行投資期間と位置づけ、ハード面の設備やクラブを成長させるノウハウの取得に努めた。松井が続ける。

「練習グラウンドなどの設備を日本円にして何十億円で買ったことや、アジアの舞台で戦っていけるようなクラブにしていくこと、そして日本人選手を他にも獲得してしっかりと経営していきたいと言われたときに、その手助けができればと思ったんです。選手としてもそうですけど、サッカーとは違うところでも日本とベトナムの架け橋になって、いろいろな形で貢献できればいいかなと」
次ページ > いつも自分の独断で移籍を決めていた。

文=藤江直人

ForbesBrandVoice

人気記事