ビジネス

2021.02.02

世界が注目する日本のクラウドスタートアップにコンビニの改革者が参入

アンドパッド上級執行役員CMO 植野大輔


Pontaカード、ファミペイ、そしてB2Bマーケティングの梁山泊へ


アンドパッドに経営参加することになった植野は、三菱商事、ボストン・コンサルティング・グループ(BCG)、ファミリーマートでキャリアを積んだ後、企業のDXや組織能力構築を支援するアドバイザリー企業・DX JAPANを設立している。三菱商事時代には新浪剛史(現・サントリーホールディングス代表取締役社長)がCEOを務めていたローソンに4年間出向。自社チェーン店でしか利用できなかったマイローソンポイントを刷新すべく、ポンタカードの立ち上げを担った。

興味深いのはローソン時代の2011年当時、まだそれほど日本人が訪れることのなかったシリコンバレーに足しげく通っていたというエピソードだ。早くからシリコンバレーやそこで起業する人々の潜在力に注目していた新浪に帯同しながら、今では大企業となった米国ベンチャー企業の要人たちとも、意見交換や交流を重ねる日々を送ったという。

「10年ほど前、シリコンバレーの起業家や経営者たちは、すでにポンタカードに紐づいたユーザーのビックデータに強い関心を抱いていました。改めて10年後の世界を先取っていたと思わされる。ローソンでの“戦争”のような日々が終わり三菱商事に戻ると、平和すぎて自分には物足りず、すぐに退社を決意しました。

BCGに籍を移したのち、ヘッドハンティングでファミリーマートに誘われることになりました。当初、ローソンへの義理もあり、とても悩んだが、知らぬ間にトップ同士(当時のファミリーマート社長は澤田貴司、ローソン社長は玉塚元一)で連絡を取り合い入社が了承されていた。笑い話に聞こえるが、業界全体の発展を想ってのことでしょう。新浪さんも素晴らしい挑戦だと、背中を押してくれました」

ファミリーマートに入社した植野は、ITを含む企業全般の変革を担うため、マーケティングやDXの責任者に。社内に存在すらしていなかったマーケティング機能や「ファミペイ」を立ち上げながら組織変革に取り組み、スタッフやアルバイトにデジタル化の重要性を説いてまわる「DX行脚」の日々を送った。そんな大企業や小売業界の一線で活躍してきた植野にとっても、アンドパッドへの経営参加は新たな未知の挑戦だ。

「分野や会社の規模も異なるし、何より自分より圧倒的に若い人しかいない組織。それでも、培ってきた能力や気づきが掛け算になるよう試行錯誤し、建設・建築という大きな産業を変えていきたいと考えている。特に私の仕事はマーケティングだが、DX時代に『アンドパッドこそがB2Bマーケティングの梁山泊』と呼ばれるよう、最強の組織を構築したいという想いを持っています。そのために、ポテンシャルを秘めた人材を日本中からドンドン積極採用していきたい」

植野は「古巣の三菱商事の企業価値が約3兆9000億円。アンドパッドをそのスケール感まで持っていきたい。そう考えると武者震いがする」と野望を隠さない。その道すがら、従来の大企業やスタートアップが抱えてきた欠点を克服し、まったく新しい組織の形をつくることが自らに課したゴールだという。

建設業だけではなく、農業などレガシー産業の変革を推し進める注目のスタートアップが日本から誕生している。そんな若い企業とDX&組織改革の担い手が出会うことで生まれるモデルケースは、スタートアップシーンのみならず産業界にとっても大きな刺激となっていくはずだ。

連載:AI通信「こんなとこにも人工知能」
過去記事はこちら>>

文=河鐘基

ForbesBrandVoice

人気記事