ビジネス

2020.09.06 07:00

コロナ禍で加速する銀行のデジタル化と、新たな可能性

Atit Phetmuangtong / EyeEm / Getty Images

Atit Phetmuangtong / EyeEm / Getty Images

新型コロナウイルスのパンデミックにより、銀行業界のデジタルへの移行が急加速している。全米各地の主要銀行や地方銀行で支店閉鎖が相次ぐ一方で、パンデミックの最中にモバイルバンキングの新規登録数は200%増加し、トラフィックは85%増加した。従来の銀行支店モデルの見通しは劇的に変化している。それらは、多くの点でポジティブな変化かもしれない。

取引オプションをデジタル化し、効率的で接触を伴わない形にすることで、銀行は、従来の支店モデルのあり方を再考することができ、それはパンデミック後の環境にも引き継がれるだろう。今のところ業界は、支店店舗の完全な撤廃は想定していないものの、環境変化に適応するため、業務を改めて評価している。消費者行動に基づいて、必要になる支店の数や、デジタルバンキングハブ・モデルの効率性などを再評価しているのだ。

フォレスター(Forrester)の報告書「新しい不安定な日常:COVID-19はビジネスとテクノロジーにどんな恒久的変化をもたらすか(The New, Unstable Normal: How Covid-19 Will Change Business and Technology Forever)」は、デジタル改革プログラムの加速と銀行支店の削減を予測しているが、これがまさにいま進行しているわけだ。

現在の新たな環境は、銀行業界に以前から求められていた転換を加速させている。ステイホーム・カルチャーが、人々や企業と金融機関との取引方法を再定義し、これまで適応に後ろ向きだった業界に、新たなマインドセットをもたらしている。

デジタル改革の取り組みはパンデミックのずっと以前から存在していたが、状況に強いられる形で、今ようやく加速されている。以前からデジタル化を優先課題としてきた銀行では、ここ数か月の間に、フィンテックなどの先進的デジタルプラットフォームとの提携を通した取引のシームレス化が一挙に進行した。筆者が会長兼CEOを務めるコネクトワン・バンク(ConnectOne Bank)についていえば、変化とデジタル投資を重視する同行のカルチャーがなかったとしたら、「新たな日常」を実現することはできなかっただろう。

今回のパンデミックの間に、シームレスな取引と顧客エンゲージメントを維持できる銀行と、そうでない銀行の差が明白になった。「ABAバンキングジャーナル(ABA Banking Journal)」の記事によれば、モバイルおよびオンラインバンキングに関してJDパワー(J. D. Power)がおこなった複数の調査で裏付けられたのは、新型コロナウイルス感染症のアウトブレイク以前からデジタル改革の取り組みを実施してきたかどうかが重要な要因であることだ。これらの調査では、消費者が重視しているのは、自分の財務情報に即座にアクセスできるようなシームレスなデジタル体験であることも明らかになった。

こうした新たな変化のなかで銀行は、リレーションシップ・バンキングの核心をなす原則のひとつである「摩擦のない顧客体験」を維持していかなければならない。本物の改革が進行しているのは確かだが、業界と多くの顧客が、依然として銀行のデジタル化に不安や抵抗感を抱いていることはわれわれも理解している。従来の支店店舗がなくなるわけではないと繰り返し伝えることが重要だ。

実際、デジタル化の加速によって、支店店舗では、より有意義でパーソナライズされたやりとりが育まれる状況が生じている。これを機にわれわれは、リレーションシップ・バンキングのモデルをさらなる高みへと進化させることができるだろう。

翻訳=的場知之/ガリレオ

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