1.新型コロナウイルス感染症(COVID-19)のパンデミックの影響で、経済の特定分野は二度と元には戻らない。
まずは、筆者に最もなじみ深いところから見ていこう。それは出張だ。2020年春には、ビジネス旅行者が一気に消えてしまった。それ以降、航空業界やホテル業界は多少は回復したものの、元に戻ったとはとても言えず、繁忙期には遠く及ばない。何とか持ちこたえているという状況だ。
問題は、それらの業界にとっての最大の顧客であるビジネス旅行者たちがいまや、移動を大幅に減らしてもビジネスを続けていける方法を見つけてしまったことだ。筆者個人は、再び飛行機に乗って出張に出られる日を心待ちにしているが、以前と同じように出張する人は少なくなるのではないかと思う。
企画と準備に何カ月もの時間を要する大型の会議やコンベンションが再開するのは、早くても2021年後半となるだろう(筆者が経営する企業が主催する、戦略投資をテーマにした会議は5月4日から5月14日に予定されているが、昨年に引き続き2年連続でオンライン開催となる)。
それ以降も、対面型イベントは規模が縮小されると見て間違いない。イベント業界や、観光客に依存する米ラスベガスなどの都市にとっては悪い知らせだ。
2.そうした影響は、経済を通じて上から下へとどんどん広がっていく。
レストランやホテルが休業すれば、そこで働く従業員や、仕入れ先などの業者、建物や土地の所有者にも悪影響が及ぶ。商業不動産業への打撃はまだほとんど見られないが、深刻なものになりそうだ。
コロナ終息後の経済では、ショッピングセンターや商店街、ホテル、オフィスビルなどのニーズが以前よりも減る一方で、倉庫や配送インフラの需要は高まるだろう。
いずれはすべてが落ち着くだろうが、そうなるまでには時間がかかり、打撃を受けるところも出てくるはずだ。
住宅について言えば、米国では、賃貸の戸建てと集合住宅の40%近くが小規模投資家によって所有されており、現在彼らは難しい選択を迫られている。経済的に安定している借主が少ない現在、所有者は、苦境に立たされている居住者と協力しあったほうがうまく行くのだろうか。
パンデミックが始まってからずっと筆者が言ってきたように、世界では価格の改定が起きるだろう。