ただ、よその国にはこんな制度ない。だから、恵まれていると考えるべきで、その制度をちゃんと厳密に運用する義務が自治体側にはあるのです。
ふるさと納税制度の問題点は?
最大の問題点として指摘されているのは、ふるさと納税で税収を「取られた」自治体(ふるさと納税者の住民税の納税先の自治体)に補填するという仕組みです(注・地方交付税でふるさと納税での控除額超過額の75%が補填される。地方交付税不交付団体には適用されない)。
国が負担する補填をゼロにするのは、難しいと思います。そのお金は、がんばった自治体のプロモーションコストだと考えるべきです。この制度で5000億円ほど個人住民税が「動いた」結果、国が3000億円補填することになったとき、その金額は、がんばった自治体のPR活動費、あるいは、がんばったことへのインセンティブだと位置付ければ、その金額は正当化できると考えます。
一方で、その業務にかかる経費が全部、代理店に持ってかれちゃうのは、「地域に雇用がない」とおっしゃっている自治体のみなさんにとっては、本当にもったいない。
自治体に言われたまま国が補助金を出すんじゃなくて、市場原理を使いながらインセンティブをつけるという手を使ってるという意味で、ふるさと納税という制度の趣旨は決して悪くない。「自治体間を競わせる」、「住まなくても寄付できる」ことを可能にした功績は大きいと思います。
ただ、「返礼の率が高すぎる」、あるいは今回の和歌山市のように「厳密に運用されてない」という事例を許してしまっているのは、運用の問題であって、制度の本来の趣旨の問題ではないと考えます。ふるさと納税という選択的納税がだめだったら、NPOへの寄付に対する税制優遇もだめということになりかねないからです。
原則論として、選択的納税は許されるべきであり、NPOへの寄付への税制優遇が認められるなら、自治体への目的特定寄付であるふるさと納税も、同じ論理で許されるべきだと考えます。ただ、返礼品や補填が「制度の趣旨的におかしいんじゃない?」と言われたら、「確かにそれは、是正が必要かもしれません」と思います。
効果の評価は、打ち手としての成熟度に応じて
行政が行う施策も、NPOが行う取り組みも、その施策や取り組みの成熟度によって、効果の出しやすさに差があります。すぐに効果が出せるものと、効果が出るまでに時間がかかるものがある。つまり、施策や取り組みの効果を評価するときに、お金出す側である納税者や寄付者が、あとから効果だけを見るのではなく、最初から成熟度を聞いて、期待値をどう正しく理解しておくかが大切です。