本土からは離れているが、れっきとしたデンマーク領の島だ。海洋性の気候で年間を通して晴れの日が多いため、雨と曇りの多い本土から癒しを求めて多くのデンマーク人が訪れる。
デンマーク人が思わずうっとりとしてしまうこの島の魅力とはどこにあるのか? 日本では、まだあまり紹介されていないこの島の魅力とサステイナブルなツーリズムの取り組みについて紹介してみたいと思う。
デンマーク本土にはない景観と自然
ボーンホルム島へのアクセスは飛行機かバスか車のルートがある。飛行機だとコペンハーゲンの空港から約45分。バスや車の場合は、フェリーを乗り継いで大体3時間半ぐらいの行程となる。
飛行機でもフェリーでも、到着するのは島の西に位置する一番大きな町、ロネ(Rønne)である。ロネから北上した島の先端には、この島の最大の観光名所でもあるハマスフース城の遺跡が残る。それ以外には特に偉大な遺跡が残るわけではない。
ボーンホルム島でもっとも大きな町、ロネにフェリーで到着する
島の周囲には、ぐるりと小さな港町が点在している。町と町の間は岩肌のむき出した景観が続き、さらにその間にはいくつもの小さなビーチが点在している。中でも島の南側にあるドゥワッド海岸はヨーロッパでも有数の美しい白い砂浜のビーチとして有名で、夏には多くの観光客が訪れる。
工芸家が集まる島。漁業の衰退からの転換
デンマークとスウェーデンの文化の混じり合った独特の文化を持つボーンホルム島は、18世紀から工芸家や芸術家の集まる島として多くのアーティストが移住して来ていたという歴史がある。ガラス工芸や陶芸が特に有名で、街を歩くと必ず陶芸家に出会うと言われるほど。島全体をほんわりと覆ったボヘミアンな雰囲気はここから来ているのかもしれない。
と言っても、それ以前も以降も、島の主要な産業は漁業だった。多くの港町には、獲った魚を燻製にする燻製小屋および、それを出すレストランがある。しかし、80年代以降、EUでも漁獲高の制限が取り締まられるようになると、徐々に漁業は衰退していった。
燻製小屋。奥に見える四つの煙突で燻製を作っている
島はその頃から、徐々に漁業への依存をやめ、そのユニークな自然とそれを生かした農業、そして元々盛んであった工芸、芸術などを組み合わせたツーリズムに転換していった。