カターニア大学の調査からは、富の蓄積に関して強い影響力を持つのは才能よりも運であることが多いと示唆されている。またコロラド大学ボルダー校の調査では、運が悪い最高経営責任者(CEO)よりも運が良いCEOに給料を支払う方が論理的だということが示されているのも、おそらく非常に分別あることだろう。
寛容な上司
ロチェスター大学の新たな調査からは、直接の上司の寛大さに関しても運が同様に持続的な効果を持つ可能性が明らかになっている。上司が与える人事評価には明らかな違いがあり、同調査では寛大な上司の下で1年働くだけで生涯の収入が年間最大12%上がることが示された。
研究者らはまず、管理職の間で従業員の評価がどれほど異なるかを調べた。あるスカンディナビアのサービス企業からパフォーマンス管理データを集めた研究者らは、管理職によって大きな不均衡があることを発見した。最も寛大な上司が割り当てられた従業員の業績評価は30%上がり、それが収入に大きな影響を与えたのだ。
評価の違いの大部分は、上司自身の個性や管理手法の違いによるもののようだった。高い評価に意欲を引き出す効果があると考える人もいれば、厳しい評価にこそそうした効果があると考える人もいるかもしれない。ここで明らかなのは、評価は大部分が非常に主観的なものだということだ。
これは、良い業績を収める人よりもパフォーマンスがそれほど良くない人の方がより高い評価を得ることは十分可能だとした、前述のカターニア大学の調査結果を裏付けるものだ。そこでロチェスター大学のチームは、パフォーマンスの良し悪しを測る上でより大きな影響を与えているのは管理職の基本的な管理能力ではなく、上司の寛大な態度なのかどうかを調べた。
良い評価者
この調査には、2つの基準が用いられた。1つ目は、数年分のパフォーマンスデータの分析だ。この手法では、調査期間中に同じ従業員が異なる上司に評価される可能性があった。パフォーマンス自体は比較的小さな変化しか遂げなかったはずだが、それぞれの管理職がどのようにパフォーマンスを評価したかは大きく変化した可能性があった。この分析では、寛大な上司と厳しい上司の間の差は最大30%になることが分かった。