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ルースはいつも周りから、「繊細で敏感すぎるから、もっと鈍感にならなければいけない」と言われ続けてきた。リーダーとして人の上に立ちたければ、「些細なことで動揺したり、クヨクヨしたりする姿を絶対に見せないように」しなければならないというのだ。ところがルースは、小さなことでもすぐに動揺する性格でありながら、優れた問題解決能力を持つ人物だという評判を築いてきた。

繊細で超敏感という、HSP(ハイリー・センシティブ・パーソン)と言われる人たちに朗報がある。新型コロナウイルスのパンデミック発生前から、ストレスにさらされたときに比較的激しい反応を示していた人は、パンデミック発生後に心的外傷後ストレス障害(PTSD)になりにくいことが、米ベイラー大学の研究で明らかになったのだ。小さなことでも動揺してしまう性質は、実のところ、役に立つのかもしれない。

研究論文の著者たちによると、そうした結果が出たのは予想外だったようだ。研究者たちも、私たち大半の予想にたがわず、ストレスをあまり感じないタイプの人間のほうがPTSDになりにくいだろうと考えていた。ところが、結果はそうではなかった。

ストレスにさらされたときの心拍反応


ベイラー大学の研究チームは当初、ストレスにさらされたときの心拍反応を研究する予定だった。そのため、同大学の学生120人に標準的なメンタル・ストレステストを受けさせ、その最中の心拍数と血圧を測定した。

テストは、被験者の学生たちが、自分の姿が映る鏡を前に、ビデオカメラで撮影されている状態で、暗算をしてその答えを口頭で記録係に伝えるというものだ。この設定は、ストレスを誘発することを意図していて、被験者は、人目を気にすると同時に、競い合うような状況で自分が評価されているという気持ちになる。

研究チームがこのテストを終了したのは2020年2月。新型コロナウイルスのパンデミック発生直前だった。研究の本来の目的が何だったにせよ、研究チームはパンデミックの発生をチャンスだと考えた。そして、3月26日から4月5日にかけて、ストレステストを受けた被験者たちに向けて、新型コロナウイルスをめぐる体験に関するアンケートを送付した。

そのころは、テキサス州にあったベイラー大学のキャンパスはすでに閉鎖されており、被験者の学生たちは22州に散っていた。新型コロナウイルスの陽性反応が出た学生はひとりもいなかったが、87.5%は「外出禁止令」が出されたところで暮らしていた。

研究チームは、メンタル・ストレステストを受けたときに強い心拍反応を示した被験者のほうが、アンケートでPTSDの症状が確認される可能性が高いだろうと予想していた。というのも、「すでに」PTSDと診断されている人のほうがストレスに反応しやすい、という結果が、過去の研究で出ていたからだ。

ところが、結果はまったく逆だった。ストレスのかかるタスクをしていたときに生物学的に敏感な反応を示していた人のほうが、パンデミック起因のPTSDを発症する可能性が低かったのだ。

つまり、ストレスにあまり反応しない人、プレッシャーがかかっても冷静でいられる人のほうが、実は、トラウマになりそうな出来事が発生したときにPTSDになるリスクが高いかもしれないのだ。

翻訳=遠藤康子/ガリレオ

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