だが、さまざまな規制を検討している主要先進7カ国(G7)とは異なり、インドはより穏健なやり方で事態に対処しようとしているようだ。
インドのパンデミックに関する状況は、ここ数週間で改善が見られる。1日あたりの新規感染者数は、ほぼ半減した。9月中旬のピーク時には1日約9万人に達していた新規感染者数が、10月末には5万人を切ったのだ。ここで念頭に置いておきたいのは、インドは14億人の人口を抱える大国という点だ。
累計感染者数のなかで、現感染者数(アクティブケース、累計患者数から、回復した人と死亡者の人数を引いたもの)が占める割合も下がり続けている。これも、人口密度が高い都市圏における医療システムへの負担を軽減させるという意味で、状況の歓迎すべき改善と言える。
インドでは、さまざまな制限が徐々に解除されており、人や物の移動や経済活動も平常に近い状態に戻りつつある。例えばムンバイでは10月以降、レストランやバーが営業を再開している。
インド経済はV字回復の途上にある。失業率も、3月から4月にかけて外出禁止措置が実施された影響で跳ね上がったが、その後は下降している。
第2四半期における国内総生産(GDP)も、パンデミックという状況を考えれば、第1四半期と比較して非常に希望が持てる数字が出ている。
インド政府の主席経済顧問を務めるクリシュナムルティ・ヴェンカタ・スブラマニアン(Krishnamurthy Venkata Subramanian)は、「第1四半期のGDPが落ち込んだのは、主にロックダウンが発令されたためだ」と分析する。
「我々は、慎重な楽観主義を保つ必要がある。経済の先行きに不透明感があるのはパンデミックによるものだ。しかしGDP概算値は、大半の専門家による予測よりも希望が持てるものになった。ただし、特に冬の数カ月については、注意を呼びかけたい。経済の回復によって楽観的な見方が出てくるが、慎重な楽観主義が適切だろう」と、スブラマニアンは11月27日、報道陣に語った。
一方、マシューズ・アジア(Matthews Asia)のファンドマネージャー、ピーユシュ・ミッタル(Peeyush Mittal)は、今後6~12カ月のインドの状況について「かなり楽観的に見ている」と述べた。この期間のインド経済は、大半の人々の予測を上回るペースで成長するというのがミッタルの見方だ。
同氏がそう見る理由には、通常は投資家があまり注視しないものもある。それは、インド政府による直接税と間接税の徴収が通常通りに行われるようになったことだ。これが、政府のインフラ投資を回復させる資金源になっている。