U-21 サッカー 日本代表として活躍した酒井氏は、怪我による引退後、プログラミングを学ぶため米大学院に進学。現在はシリコンバレーのIT企業Splunk(スプランク)でシニアエンジニアとして働きながら、YouTube等との複業で5千万円を超える年収を稼ぐ。
阿部氏は、V・ファーレン長崎で3シーズンプレーし、引退後にカリフォルニア大学サンディエゴ校で国際関係学修士号を取得。現在はマレーシアにあるアジアサッカー連盟で審判部のヘッド、海外スポーツ界に挑戦する若者をサポートするSPORT GLOBALなど、国際スポーツの舞台で活躍している。
二人はなぜ華麗な転身を遂げられたのか。対談2回目は、どのように「思い込み」を排除し、活路を拓いたのかを聞いた。
思い込みを排除して選択肢をオープンにする
竹崎孝二(以下、竹崎):スポーツ選手は引退すると、コーチや解説者、タレントになるという発想に縛られる方が多いというイメージがあります。どうしたら、お二人のようにフラットな発想で、自分の経験や培ってきたスキルを別の分野で横展開しようと思えるのでしょうか。
酒井潤氏(以下、酒井):たしかに、サッカー選手はずっとサッカーをやってきたわけだから、サッカーだけしか見ておらず、他の可能性を信じられない人は多いと思います。それは決して悪いことではなく、そう信じるからこそアスリートになれるという面もある。しかし、セカンドキャリアとなると、この思い込みはデメリットとしてはたらくのも事実です。
やはり、まずは情報を得ることが大切なのではないでしょうか。監督や周りの人たちに相談すると思考が似通るので、全く関係のない業界の人にアドバイスを求めるのも良いかもしれません。
竹崎:身近な人に相談すると、同じような回答でモチベーションが下がることもあるので、自分と離れたことをしている人、海外の人などに話をもっていき、そこから情報を得るのは良いアイデアですね。
酒井:固定観念がはたらくと、柔軟なアイディアは生まれませんよね。もし私が相談を受ける立場なら、まずは情報を全部目の前に出して見せます。サッカーコーチであればこれくらい稼げる、他の職種だとこれくらい稼げると。
英語ができないからという理由で海外行きを諦める人もいますが、私自身、英語ができずに海外へ行って、今こうして働けています。思い込みで選択肢を狭めているのが現状なので、なにはなくとも、まずは情報を集めることからがスタートだと思います。
阿部博一氏(以下、阿部):「自分はスポーツしか取り柄がない」と思い込んでしまうのは、実はアスリートだけのせいではないんですよ。日本社会にそういう仕組みがあるのだと思います。
指導者と選手の世代ギャップもありますし、昔のマインドセットのまま生きてきた人たちに「お前はスポーツしかできないんだ」などと押し付けられては、思い込むのも当然です。スポーツ選手はまず、自分は特異な環境にいるんだということを理解したほうがいいと思います。