ビジネス

2020.12.11 08:00

道から外れる勇気と考え抜く力 元アスリートに聞く「キャリア戦略」


酒井:そういえば、私も同じような経験がありました。就職相談に行ったら、「君は体育会系だから、不動産やビール会社の営業か料理人が良いよ」や「神学部だったら就職は難しいね」と言われたことがあります。阿部さんが言ったように、大学や学歴、あるいはたった1日のテストでその人の人生を決めてしまうのは良くないですね。

阿部:理不尽に抗う反骨心は大事ですよ。僕は学生時代に就活フェアに参加したとき、会場に入って10秒くらいで帰りました(笑)。みんな同じスーツを着て、名刺を人事担当者に渡している光景が異様に思えて。これは僕にはできないわと感じたと同時に、「働かせてくれ」と言うのではなく、「うちで働いてほしい」と言われる人になろうと思ったことを覚えています。

竹崎:そういう、いわゆる尖った人こそ、海外に出るとさらに活躍しやすいですよね。僕は今アメリカのアマゾンで働いていますが、阿部さんが言ったように学歴はバラバラです。今の上司の一人は、元海兵隊の10年選手。見るからに戦闘能力が高くて、怒らせたらワンパンで殺られそうなオーラがある人です(笑)。

アメリカには、短期間の大学院卒業プログラムもありますし、学歴なんて後からいくらでもやり直しがききます。年下の上司も多いですし、年齢や学歴にとらわれない良さはすごく感じています。

酒井:ところで、阿部さんはキャプテンの経験がありますか。

阿部:大学時代はキャプテンでした。

酒井:やっぱり! そういう感じがしました。喋り方からも感じますし、就職フェアでの話を聞いていても、気持ちが強いタイプのプレーヤーだったのかなと。私はあまりリーダータイプではないので、戦略的に勝負する方向にいきましたが、阿部さんのように強い気持ちをもつことは、海外で活躍するには大切だと思います。

阿部:たしかに、海外では自分の考えを伝えることは大切ですよね。アジアサッカー連盟(AFC)で働く日本人も皆、自分で考えて意見を言える人ばかりです。


酒井潤(さかい・じゅん)◎2001年にU-21 サッカー東アジア競技大会に日本代表として出場し、金メダルを獲得。現在は、シリコンバレーを代表するIT企業スプランクにて、エンジニアとして活躍する傍ら、Udemyでのプログラミング講師やYouTubeでの情報発信など幅広く活動している。主な著書に「スキルの掛け算で年収が増える 複業の思考法

阿部博一(あべ・ひろかず)◎V・ファーレン長崎で3シーズンプレーした後(最終年はプロ契約)、カリフォルニア大学サンディエゴ校にて国際関係学修士号を取得。グラミン銀行でのインターン等を経て、2016年よりマレーシアにてアジアサッカー連盟(AFC)審判部副部長を務める。現在はSPORT GLOBALを立ち上げ、海外スポーツ界に挑戦する若者のサポートも行う。Forbes JAPAN「国際スポーツの舞台で活躍する8人の日本人」、東洋経済オンラインにて執筆。

文=伊藤みさき 構成=竹崎孝二

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