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2020.12.10 08:00

サッカー引退後にシリコンバレー、マレーシア。酒井潤と阿部博一の選択


阿部:それがまさに大学生のときで、初めて受けたTOEICで910点をとったときに、なんでも積み重ねれば到達できると理解したことがトリガーになりました。頭が良い人のなかにも、英語が使えない人ってたくさんいますよね。IQの高さは関係ないんだなと。工夫すれば、僕でもいけると思った瞬間でした。

酒井:私も同じですね。大学では神学部でしたが、プログラミングの勉強も独学でやっていました。もちろん神学部にはプログラミングに詳しい人はいないから、同じサッカー部に所属する工学部のチームメイトに話を聞いていたんです。

彼らに薦めてもらった教科書で勉強していたのですが、工学部の彼らでさえ、プログラミングは半年くらいしか勉強しないらしくて。だから、私の方が彼らよりもプログラミングができるようになり、そのときに、絞り込んで突き詰めればどの分野でもやっていけると感じました。

竹崎:お二人とも、学生時代にはすでに「1つに突き詰めてやっていく力は他にも展開できる」という原経験をもっていたのがすごいですね。

阿部:当時は言語化できていなかったんですが、今振り返ると、それこそまさに、スポーツで得られる力だと思っています。宮本武蔵の『五輪書』の一節に、「兵法の利にまかせて、諸芸・諸能の道となせば、万事において、我に師匠なし」という言葉があるように、1つのことを突き詰めていけば、そのロジックやスキルを応用することで、どのようなことでも実現できるのだと思います。

酒井:加えて、「情報収集」はひとつのキーポイントだと感じます。私の場合、大学生の頃に教授や年上の人たちに良いアドバイスをもらえたことも大きかったです。教授たちに、「これからはITと英語の2つができれば食っていけるよ」と言われ、さらに、IT業界は、ネットワークやプログラミング、データベースというように、業界内でもいろんな分野に分かれているということも教えてもらいました。

大学院に進学してからも、周りは有名校出身の人たちばかりだったのですが、教授たちのアドバイスもあって、1つを集中的に習得すれば彼らにも勝てるというのは感じていましたね。なので、東大出身の竹崎さんを前に繰り返すのもなんですが、やはりIQだけでなくて、情報を集めるとか、何かに特化することが大切というのは真実だと思います。実際に、今から私と竹崎さんがヨーイドンでプログラミングをやったら、私の方が経験が長い分、竹崎さんよりもできると思いますからね。

竹崎:悔しいけれど、その通りですね(笑)。


酒井潤(さかい・じゅん)◎2001年にU-21 サッカー東アジア競技大会に日本代表として出場し、金メダルを獲得。現在は、シリコンバレーを代表するIT企業スプランクにて、エンジニアとして活躍する傍ら、Udemyでのプログラミング講師やYouTubeでの情報発信など幅広く活動している。主な著書に『スキルの掛け算で年収が増える 複業の思考法』。

阿部博一(あべ・ひろかず)◎V・ファーレン長崎で3シーズンプレーした後(最終年はプロ契約)、カリフォルニア大学サンディエゴ校にて国際関係学修士号を取得。グラミン銀行でのインターン等を経て、2016年よりマレーシアにてアジアサッカー連盟(AFC)審判部副部長を務める。現在はSPORT GLOBALを立ち上げ、海外スポーツ界に挑戦する若者のサポートも行う。Forbes JAPAN「国際スポーツの舞台で活躍する8人の日本人」、東洋経済オンラインにて執筆。

文=伊藤みさき 構成=竹崎孝二

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