酒井:私は、怪我でサッカーができないとなったとき、まずはサッカーのコーチをやろうと思いました。そこでコーチの年収を調べてみたら、自分の理想とする年収には届いていなかった。本田圭佑選手レベルでない自分が、コーチで4人家族を食わせていくのは厳しいとわかったんです。そこで、いろんな職業の給料を片っ端から調べることにしました。
そのときわかったのは、日本の医師や弁護士の年収は約2000万と言われるのに対し、当時のIBMのプログラマーは年収5000万だということ。海外に行けば、日本の医師や弁護士よりも稼げると知って、プログラマーへの道を選びました。
竹崎:プログラミングを勉強するのに、大学院に進学したのには理由がありますか。
酒井:これも調べてわかったことですが、アメリカで働くにはH1Bという就労ビザが必要で、そのH1Bを取得するにはアメリカの大学院を卒業していると有利なんです。さらに、大学院の学部と卒業後の職種が一致している必要もあったので、必然的に情報系の大学院へ行くことになりました。
竹崎:とても戦略的ですね。もし、酒井さんがプログラマーではなく、医師や弁護士を選択してたらどうなっていたと思いますか。
酒井:IQが高い人たちと同じスピードで医師や弁護士になるのは難しいですが、どのような仕事も2〜3年懸命に働けば大概のことがわかってくるように、時間をかければ私もなれていたと思います。ただ、なるためにかかるコストを考えると、後から追いかける立場としては、リターンはそれに見合わないかなと。
勉強して、国家試験を受けないといけませんし、その年に1回の試験の日に体調を崩さないとも限りません。それに比べてプログラマーは資格がなくてもなれますし、見返りも大きいから、やはり医師や弁護士ではなくプログラマーを選びますね。
選択と集中で武器を磨き、別分野に横展開する
竹崎:大体のものは、時間をかける、あるいは、量をこなすことで対処できるというのが酒井さんの見解ですが、逆にいうと、プログラミングであれば、時間や量以外のところで酒井さんの強みを生かせる点がある、と判断されたのでしょうか。
酒井:話は高校時代に遡りますが、私が通っていた学校は、千葉県でも有数の進学校だったんですね。私はスポーツ推薦で入ったのですが、サッカーも勉強もやらないといけないとなると、みんなに勝てない。そこで、何か1つの教科に絞ろうと思い、とにかく数学だけを勉強したんです。
実際にプログラミングを勉強してみて思うのは、数学が理解できているとプログラミングの理解も早いということ。プログラミングは、私が学生時代に集中して取り組んできた数学が活かせると思いました。
阿部:酒井さんが高校のときに数学に集中した話は、僕が大学のときに英語に集中した話と同じですね。サッカーに加えて、全部の教科をやっていてもしょうがないという考えがあって、他の授業中も英語ばかり勉強していたので、教授に怒られたこともありました。
竹崎:お二人がサッカー選手を引退されてから、グローバルビジネスという全く別の業界で活躍できている背景を知りたいのですが、サッカー以外の業界でもやっていけるな、と思ったきっかけや出来事はありますか。