11月25日には、さらなる良いニュースが舞い込んできた。人類が抱えるもうひとつの災厄が、着実な減少傾向にあるというのだ。2020年の「世界テロリズム指数」によれば、世界におけるテロによる死者数は5年連続で減少しているという。
この調査によれば、2019年のテロ行為による全世界死者数は1万3826人で、2018年から15.5%減少した。また、いわゆる「イスラム国」がシリアとイラクの各地を残虐なかたちで支配していた2014年の死者数3万3438人と比べると、59%減少したことになる。
2019年に起きたテロの主な誘因は紛争だ。全死者数の96%が、すでに紛争の起きている国で犠牲になった人たちだった。死者数が着実に減っている原因としては、中東における紛争が落ちついてきていることが挙げられる。とくに、シリアとイラクにおけるイスラム国の活動の衰退が大きい。とはいえ、死者数の減少は中東に限ったことではなく、北アフリカ、ロシアおよびユーラシア、南米、南アジアでも減少が見られている。
「世界テロリズム指数」の報告書は、ここ数年で治安状況が大きく改善しているものの、テロは依然として多くの国で深刻な脅威になっていると指摘している。2019年には、テロによる死者が1人以上出た国は少なくとも63カ国にのぼった。
2019年にテロによる死者数がもっとも大きく減少した国はアフガニスタンとナイジェリアだが、死者数が1000人を超えているのも依然としてこの2カ国だけだった。2019年の全世界におけるテロによる死者数のうち、アフガニスタンは41%を占め、5725人が犠牲になった。ぞっとするような数字だが、それでも、全世界の死者数の45%を占めていた2018年に比べれば、状況はわずかに改善している。
ナイジェリアは、死者数の減少幅がアフガニスタンに次いで2番目に大きかった。そのおもな要因は、フラニ族過激派の攻撃による死者が72%減少したことだ。ただし、ナイジェリアはいまだに過激派組織「ボコ・ハラム」の封じ込めに苦労しており、この組織によって生じた死者数は25%増加した。ナイジェリアでは2019年、合計1245人がテロにより死亡した。
2019年に死者数がもっとも大きく増加した国は、西アフリカのブルキナファソだった。そのおもな原因は3つの集団の活動にある。具体的には、「大サハラのイスラム国(ISGS)」、「イスラムとムスリムの支援団(JNIM)」、「アンサール・アル・イスラム(AI)」のブルキナファソ支部だ。ブルキナファソにおけるテロ攻撃による死者数は、前年から507人増加し、593人に達した。これは590%の増加にあたる。
そのほか、数字の悪化が目立つ国としては、スリランカ、モザンビーク、コンゴ民主共和国が挙げられる。スリランカで増加した死者数は、すべて2019年4月のイースター(復活祭)サンデーに起きた連続テロ攻撃によるものだ。キリスト教会などを標的としたこのテロ事件では、266人が犠牲になった。