報告書によると、2001年9月11日に起きた同時多発テロ事件以降に米国が関わった戦争により、やむなく故郷を離れた人々の数をまとめた包括的な調査研究は今回が初めてだという。報告書は、これらの武力紛争の短期的・長期的な帰結に関する分析においては、避難民の発生が及ぼす影響を中心的な要素として考慮すべきだと主張している。
報告書によると、この研究が調査対象としたのは、米国政府が武力紛争の開始あるいは拡大に明確な役割を果たした戦争のほか、ドローンによる空爆や戦場での助言、武器販売などの手法で戦闘行為に相当程度関与した戦争だという。しかし、避難民が発生する原因には複数の複雑な要素が絡むため、今回の報告書も、その原因として米国だけを名指ししているわけではない。
2001年以降、故郷を追われた人の数は8カ国で推計3700万人に達した。うち800万人は国外に逃れ、残りの2900万人はそれぞれの国内で避難を余儀なくされているという。
ただし、このうち2530万人は、現時点でもとの居住地に戻ったと考えられている。これはわずかながら希望が持てる情報だが、それでも、故郷を追われたトラウマは消えない。また、こうした帰還民も、必ずしも住み慣れたかつての家に落ち着き、安定した生活を取り戻しているわけではない。
最も大きな影響を受けているのはイラクで、2003年の米国による侵攻(イラク戦争)以降、920万人が難民となった。その大部分は国内避難民だ。
米国は2014年9月以降、イラクの隣国であるシリアでも軍事行動に関わっており、同国では700万人強が避難を余儀なくされたと推定されている。米国史上最長の軍事作戦が続いているアフガニスタンでは、通算で530万人が故郷を追われた。