不安障害の診断や管理の形にジェンダーによる違いが存在することを示唆した研究は、これが最初ではない。ある研究では、不安障害で入院した患者のうち10人に3人は60歳を超える女性であることが明らかになった。また、ストレスによる入院は、15〜19歳の少女でもっとも多かった。
2016年に公開された統計値では、子ども向けの電話カウンセリング「チャイルドライン(ChildLine)」の相談件数において、不安に関する相談が前年から35%増加していると共に、相談する率の男女差を見ると、8歳という幼い年齢でも、女の子が男の子の7倍にのぼることが示されている。
女性のほうが男性よりも不安障害と診断されるケースが多い理由については、生物学的な違いやホルモンを主な要因と見る人もいる。その一方で、社会的圧力や家庭での責任も影響しているとする意見もある。不安障害の診断において全般的なジェンダーギャップが存在する可能性はあるものの、精神衛生に関しては、人種やセクシャリティ、社会的階級、医療サービスの受けやすさといったほかの要素も個人の体験に関係してくることが複数の研究で明らかになっている。
パンデミックの発生以来、不安や気分の落ち込みを訴える人の数が全般的に増えている。多くの人が自宅で社会的に隔離されることを余儀なくされるなか、孤立のリスクが大幅に高くなっている。心の健康に関する慈善団体で、英国を拠点とする「マインド(Mind)」は、今回のパンデミックを精神衛生上の緊急事態と表現している。同団体によれば、成人の半数以上(60%)と若者の3分の2以上(68%)が、ロックダウン中に精神状態が悪化したと述べているという。
世界各地の1万人あまりから話を聞いた非営利の国際支援組織「ケア(CARE)」によれば、パンデミックは女性の精神衛生に危機をもたらしており、その原因は支援の不足、家事分担の不平等、不確実性にあるという。
メンタルヘルス問題の診断状況を検証する際には、数多くの要素を考慮しなければならない。だが、不安障害の診断と管理の形にジェンダーギャップが存在することは、複数の研究で明らかになっている。こうした格差が存在する明確な理由は不明だが、パンデミックによってそうした格差が悪化の一途をたどっている、と複数の慈善団体は指摘している。