──2つめの「諦めないこと」についてはいかがでしょうか?
私は両親が起業家の家に生まれました。家訓は「ネバーギブアップの精神」。幼い頃から毎日、平均して1日3回以上「ネバーギブアップ」と言われ続ける家で育ったんです(笑)。
そんな環境下で育ったので、「勝つまでやれば負けじゃない」という考え方は骨の髄まで叩き込まれています。
事業立ち上げや資金調達など、10回トライして1回うまくいけば良いと言えるほど勝率が低いのが経営という世界。でもだからこそ、どんなに結果が芳しくなくても、「勝つまでやれば負けじゃない」という気持ちをもって諦めずに取り組んでいくことが、経営者として超一流になる必須条件だと考えています。
15億円の大型調達を支えた「倫理観」
──3つめの「倫理観と筋を通すこと」についてもお聞かせください。
これも「志」と同じで、期待をかけてくださる人に対して応えたいと思えば思うほど、自然と「倫理観と筋を通すこと」を大切にするようになりました。
例えば資金調達において、「起業家が常軌を逸したスタイルだから資金調達に成功した」といったような記事が美談として持てはやされたりしますが、私はそんなのは幻想だと思っています。
いくら起業家が狂っていても、投資案件としてリーズナブルでなければ投資家はついてこない。いくらなんでも10億円といった大金をロマンだけでは払えません。「倫理観と筋を通すこと」が必ず求められるのです。
──御社は2019年に15億円の大型資金調達にも成功されています。
私が資金調達で大事にしているのは、投資家に得してもらえると信じる値付けをすること、そしてその根拠をしっかりと説明することです。
会社を綺麗に化粧して偽ろうとするのではなく、会社の実像と可能性をしっかり理解してもらうのが資金調達における「筋」です。
投資家に儲けていただけるようなロジックを丁寧に作りこんだ上で資金調達活動をすれば、自分は儲け話を持ってきているんだと自信を持つことができますし、投資家も必ず納得してくれるでしょう。
「倫理観と筋を通すこと」で、支えてくださる方々を巻き込んでいく。そしてやると決めた以上はネバーギブアップの精神で決して「諦めない」。この繰り返しが、成功する起業家にとって重要なのだと考えています。
「まずやってみよう」の落とし穴
──高橋さんは東大在学中に起業されています。学生起業を振り返って良かったこと、良くなかったことをお聞かせください。
良かった点は、早いうちからさまざまなビジネス経験ができたこと。21歳で数千万円のお金を使ってビジネスのやり方を学ぶことができたのは、起業ならではの体験だったように思います。
しかし、良くなかった点もたくさんあります。
「まずやってみよう」という格言が起業本に書いてあったのを曲解してしまい、家庭教師の派遣事業や東大生による授業動画配信サービスをとにかく手当たり次第に「やってみた」のですが、結果的にそれが全くうまくいきませんでした。
東大生による授業動画配信サービスは2000万円以上投じて、売上はたったの「2万円」。
安易に「まずやってみよう」ではなく、徹底的に市場をリサーチし、様々な人に会い、自分なりの勝ち筋を見つけてから取り組むこと。いま思えば当たり前なのですが、それを当時から実践できていたら、結果は全く変わっていたと思います。