Zooxとクルーズは、ロボットタクシー専用に設計された車両の運用を目指している点で、ウェイモとは異なる。また、クルーズがゼネラルモーターズから車両を調達し、ウェイモが提携する自動車メーカーから数万台もの車両を購入しているのに対し、Zooxは車両を自社で製造している。
Levinsonによると、Zooxはテスラの巨大な組み立て工場があるカリフォルニア州フリーモントに車両製造工場を建設中で、稼働すれば年間数万台の生産が可能になるという。その秘訣は、組み立てが簡単なデザインにあるという。
「我々は、世界中のティア1サプライヤーと巨大なサプライチェーンを構築し、部品の供給を受けている。例えて言えば、数トン規模のレゴブロックを組み立てているようなものだ。駆動装置やボディ、座席、タイヤをグリッドに取り付ければ完成だ」とエヴァンスは話す。
アマゾンは、EVトラックメーカーのリビアン(Rivian)にも出資し、10万台の配達車両を発注しているが、Zooxの工場はリビアンのものとは別に建設している。
「我々とリビアンは全く別の会社であり、目指している市場も異なる。リビアンは、人間のドライバーが運転するEVトラックを開発している。将来的に自動運転機能も搭載するだろうが、個人や企業に販売することを想定している。我々が目指しているのは、ロボットタクシー市場だ」とLevinsonは話す。
間もなくロボットタクシーのテストを開始
Kentley Klayは、2020年末までにサンフランシスコでロボットタクシーの商用運用を開始することを目指していた。その実現は困難だが、Zooxは完全無人車をカリフォルニア州とネバダ州で走行させる許可を得ており、1年以内に商用運用のテストを開始できる見込みだ。同社は、現在サンフランシスコとラスベガスで、トヨタ製のクロスオーバーSUVを改良した車両でテストを行っている。
2019年以降、Zooxの開発スピードは停滞しているように見えるが、今後はスタートアップ企業の課題である資金調達を気にする必要がなくなり、開発に専念することができる。また、エヴァンスとLevinsonによると、アマゾンはZooxの経営に口出しをせずに見守る予定だとのことで、2021年はZooxにとって飛躍の年になると思われる。新型コロナウイルスの影響で、ウェイモとクルーズの進捗が停滞していることも、Zooxには朗報だ。
エヴァンスは、パンデミックの影響を懸念しつつも、「勝負を決めるのはレジリエンス(回復力)だ」と話す。彼女は、かつてのメンターである、インテルの共同創業者アンディ・グローブから教わった言葉を今でも肝に銘じている。「危機において、能力のない会社は潰れ、優秀な会社は生き残る。そして、素晴らしい会社はさらに強くなる」