ビジネス

2020.11.25

監視カメラの概念を変える「未来のビジョン」 セーフィー佐渡島隆平

セーフィー代表取締役社長 佐渡島隆平


販売代理店も、資本業務提携先を含め、100社以上。AI・解析企業との連携も順調に進んでいる。導入実績を見ても、「飲食・小売・サービス」「公共・建設・物流」「不動産」とすでに幅広い業界で利用されている。

「『誰も知らんがな』という地味なスタートアップ」を自称する佐渡島だが、新卒で入社したソニーネットワークコミュニケーションズで現ソニーCFO十時裕樹のもとで学び、新規事業開発やエムスリー、エニグモを支援しながら身につけた手腕を発揮し、創業から6年で、「血のにじむような地道な努力を重ね」て盤石の体制を構築。

目指すのは、あらゆる産業がセーフィーのプラットフォームを通してつながる「映像データの民主化」が行われた世界だ。

「僕らがいう『みんなの意思決定の役に立つ』『意思決定を変えていく』というのは、すべてのトランザクション、行動に移す『手前』の情報が見えている世界。例えば、宅配の人が集荷する際に、荷物が何個あるか事前にわかれば、『すごい荷物があるんだ。では2人で取りに行こう』となる。いくつ荷物があるか、また店内に何人いるか、などはプライバシーとは関係がありません。いわゆる、すべての物事がリアルタイムでマッチング、ビッティングされていくような世界。それを前提に構成される世界に貢献したい」

この発想が、大きな産業と結びつくことで、新常態をあらゆる場所、シーン、事例で築いていく。「セーフィーのサービスだと知らないで、使っている人も多い。未来をつくるための『インフラ』となる、ということがすべてなので、それでもいい」

佐渡島は学生時代、「休講情報」を提供する事業で起業を経験していた。すでにその頃から「人の意思決定に貢献する」というサービスの発想はあったかもしれない。ただ、いま、その活用される領域や場所、用途は格段に広がりを見せている。

最近、佐渡島がユニークだと思ったのは、某通販企業の事例。社運をかけて大規模な投資を行って建設中の物流倉庫の映像を社内で共有しているケースだ。

「徐々に大きな倉庫ができていく様子を、毎日、全国にいる社員が見ることで、モチベーションの向上につながるといいます。こんな使い方もあるのか、と」

監視カメラと聞いて想像するのは、特定の人のための映像で、人の行動や発想を制限する社会。一方で、セーフィーのクラウドカメラが目指すのは、みんなのための映像で、社会をより可視化し、人や組織の行動や発想をより自由に、より進化させる世界だろう。

「みんなの意思決定が変わり続ける」よりよい社会──。いつの間にか訪れるその実現を人知れず支援していたのが、佐渡島率いるスタートアップだった。それくらい大きなインパクトをもたらす可能性を秘めている。


佐渡島隆平◎1979年生まれ。甲南大学在学中の99年にDaigakunote.comを起業。2002年にソニーネットワークコミュニケーションズ入社、モーションコーポレートを経て、14年10月セーフィーを森本数馬、下崎守朗と共に創業。

11月25日発売の「Forbes JAPAN」1月号では、上位受賞者のインタビュー記事や200社を網羅した2021年版「日本のスタートアップ図鑑」などを掲載。また、11月25日16時〜18時に「Forbes JAPAN CEO CONFERENCE」内にて、TOP10起業家が集うオンラインでの「起業家ランキング表彰式」を開催する。

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文=フォーブスジャパン編集部 写真=アーウィン・ウォン ヘアメイク=内藤歩

この記事は 「Forbes JAPAN No.077 2021年1月号(2020/11/25発売)」に掲載されています。 定期購読はこちら >>

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