カメラ台数1年で3倍増
セーフィー社を訪れると、オフィスの入り口にあったのは、顔が映し出されるタブレットだ。今年9月にリリースした顔認証で入退室をハンズフリーにするクラウド型入退室管理システム。AIにより、映っている顔が判別できる。
次に案内してもらったのは、製品・サービスの展示スペース。「来社いただくのは3回目ですか。カメラマンさんははじめてですね」と佐渡島が言うのは、同社のサービスで顧客の来店状況を把握して最適なコミュニケーションができる接客サービスだ。カメラでオフィスの入り口を映し、モニター越しには、年齢や性別、来訪回数などを見ることができる。
そして、取材中、佐渡島が最も力を入れて話したのが、今年7月に販売開始したウェアラブルクラウドカメラと称するポケット型カメラ「セーフィー ポケット2」だ。本体が小さく軽く、別電源やインターネット回線いらずで、装着しながら使用でき、ライブ通信で会話でき、持ち運び可能でどこにでも置けることが特徴の新製品だ。
「コロナ禍で発掘された新しい需要は、『遠隔業務へのニーズ』です。遠隔の現場業務には『ネットワーク環境がない』『デバイスを持ちながら作業できない』『悪天候の影響』など課題がある。コロナ禍で、飛行機の管理や倉庫の遠隔監視、製造業の現場、インフラ点検、現金輸送警備など様々なニーズが顕在化しました」
特に、関心度が高かったのは、土木・建設現場だ。国土交通省が5月、ウェアラブルカメラなどによる映像と音声の双方向通信を使用して「段階確認」「材料確認」「立ち会い」を行う、「遠隔臨場」という新しい仕様を策定した。現場に赴き、実際に目で見ることが当たり前とされてきた業界だが、この仕様策定により、遠隔地からの立ち会いも可能になった。
「今年の急成長を支えたのが、このカメラ。『遠隔臨場』などニューノーマルな遠隔業務を実現でき、プリセールス時点で8000台受注できた。コロナ禍で、早巻きの『本格的な需要』がきたかたちだ。ただ、建設現場で働く方から聞いた話では、これまでは現場移動を含めて1日2カ所しか巡回できなかった。カメラを利用した新しい建設管理では、本社にいながら1日に40現場を遠隔で管理でき、生産性が高まる。カメラによって、より本質的で、新しい働き方の実現を可能にしたのではないか」
セーフィーはこの1年で、課金カメラ台数が19年8月末時点の3万2000台から10万台(20年10月末時点)に増加、月次売上高も前年同月比約3倍まで伸びた。
「映像データの民主化」と意思決定
同社は2014年、佐渡島と前職の同僚だった、森本数馬、下崎守朗の3人で共同創業した、クラウド録画サービス市場シェア約4割を占める圧倒的No.1企業だ。これまでの資本業務提携先は、ソニーネットワークコミュニケーションズ、NEC(NECキャピタルソリューション)、オリックス、キヤノンマーケティングジャパン、関西電力、セコム、三井不動産、NTTグループ(NTTドコモ・ベンチャーズ)とそうそうたる日本の大企業が名を連ねる。