ソースネクストはこうしたユーザーの声をきっかけに、筆談用途に特化した「ポケトークmimi」と「タブレットmimi」を新たに開発。 話した内容を瞬時にテキストで表示することで、耳の遠い人との会話をサポートしてくれる。言わば「AIボイス筆談機」というようなものだ。
ポケトークの技術を活かしたこの筆談機の強みは、その音声の認識精度だという。「筆談をするだけならスマートフォンのアプリで間に合うのではないか」と思う人がいるかもしれないが、通話用途を前提としたスマホのマイクでは、十分な認識精度が担保できないのが現状だ。
それに対して、翻訳の精度を高めるために音声の聞き取り能力に力を入れてきた「ポケトーク」の新シリーズには、スマホよりも高性能なマイクが搭載されている。マスク越しのコミュニケーションであっても、十分な認識精度を誇るため、コロナ禍でもストレスなく使用できるという。
母親とのやりとりから開発が進む
また使い方が極めて簡単で、スマホが苦手な高齢者の方でも安心して利用できる。ソースネクストの松田憲幸社長は、開発の手助けとなったのは、自分の母親とのやりとりだった言う。
「私の母親が難聴を患っているもので、マスクをしている人とのコミュニケーションが困難だということは前から認識していました。実は、今回の新製品は、半年以上前から母親に実際に使ってもらいながら開発してきました。81歳になる母親が、実際に毎日継続的に使用しているのを身近に見てきたので、この商品は、難聴で悩む多くの人の役に立つだろうと自信を持っています」
難聴の人たちにとっては、外出先などでコミュニケーションに困難が感じられる場合に筆談が有効だが、筆談ボードの設置がない店舗も多く、不便も多い。このAI筆談機なら、電源を入れて本体に向かって話すだけで、音声を自動的に文字へと変換してくれるため、電子機器の操作が苦手な高齢者でも、簡単に使うことができる。
コロナ禍が生んだポケトークの意外な使われ方。「捨てる神あれば、拾う神あり」ということわざが頭に浮かんだ。