谷本:簡素化する、ではなく「なくす」方向へ舵を切ったわけですね。私は髙田社長の「耳メール」の話がすごい好きなんですが、それも、「なくす」の一環だったんですか。
髙田:ええ。あまりにも会議の量やそのための資料作成の時間が多くて、みんな忙殺されていたので、会議改革を行いました。
まずやったのは、情報共有のための会議をなくすことでした。「先日のアレはこう対応しました」「最近この商品が売れています」というようなことですね。こうした共有については、全部メールで僕の耳に入れてくれ、と。それが「耳メール」です。件名にカギカッコで「耳」と入れれば、社長あてにばんばんメールをしていいという制度です。
社員には返信しないよと伝えていますが、一応、全部返信しています。中には「共有だけだよ」って言っているのに、膨大な資料を添付して決裁を仰ごうとしているケースがあるので、そういう場合は「ちゃんと説明して欲しい」と返信したり。でも、この制度のおかげで、いろんな情報が入ってくるようになったし、劇的に会議の数そのものをなくすことができた。
会議の質も変わりました。いまは基本的に、ディスカッションをするか、決裁を仰ぐ会議しかありません。
そして、次に会議の内容を変えました。48時間前までに僕の秘書に会議のアジェンダを送るというルールになっています。アジェンダでは、「感覚合わせ、プロセス確認、決裁、成果報告と次回への課題」の4種類から、会議の達成目標を設定しなければなりません。で、そのとき、「感覚合わせ」で会議を設定しておきながら、決裁を迫ろうとする社員がいる(笑)。そういう時は、すぐに差し戻します。「今日は感覚合わせなの? ならいいけど、決裁が欲しいなら、この資料とこの資料が足りない。来週もう一度持ってきて」と。そうすると、会議にかかる時間も格段に短くて済みます。
それから、最近導入してすごくいいなと思うのは、「ノー会議タイム」を設けること。フレックスタイムなのに、会議があるから活用できないとか、お昼を食べる時間がなくなったという声を聞いて、毎日9~10時、12~午後2時、18時以降は会議を一切してはいけないというルールをつくりました。これもものすごく好評です。
業務を見直してやり方を工夫すれば働き方は変えられるっていうカルチャーを浸透させるには時間がかかりました。でも、3~4年経ってようやく定着してきたなと感じています。
髙田旭人◎ジャパネットホールディングス代表取締役社長兼CEO。1979年長崎県生まれ。東京大学を卒業後、野村證券を経て、2004年にジャパネットたかたの社長室長として入社。バイヤー部門、コールセンター部門、物流センターの責任者を経て、2010年ジャパネットコミュニケーションズの代表取締役社長に就任。2012年ジャパネットたかた取締役副社長に就き、2015年1月より現職。グループ全体の経営戦略や事業戦略を構築している。中小企業診断士。2020年4月に初の著書『ジャパネットの経営 東大卒2代目の僕がカリスマ社長の後を継ぎ大事にしてきたこと』(日経BP)を上梓。