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2020.11.11 08:00

減らすのではなく「なくす」──段階的に生産性を上げるジャパネット式「働き方改革」

(写真:日本経営合理化協会)

(写真:日本経営合理化協会)

テレビショッピングで根強い人気を誇る、「ジャパネットたかた」。5年前に2代目社長として経営を引き継いだ髙田旭人社長は、最初の数年で大胆な働き方改革を行ったという。以前は夜10時以降も働いている社員がいたというが、じっくり3~4年かけて働き方を変えた。2020年9月に行われた全国経営者セミナーで、これまで語られてこなかった髙田氏の経営手法が明かされた。


Forbes JAPAN編集長 谷本有香(以下、谷本):2015年にいわゆるカリスマ社長だったお父様から経営を引き継いだわけですが、引き継ぐにあたりプレッシャーはありませんでしたか。

ジャパネットホールディングス 髙田旭人(以下、髙田):そういう意味では、父が全権を任せてくれたのでとてもありがたかったですね。父は会長としても残りませんでしたので。就任の半年前に父からバトンを受け取るということが決まって、そのときから一貫して、もう全部好きにやっていいと言われていたので、そこまでプレッシャーはありませんでした。

谷本:普通、なかなか全権を渡せないですよね。

髙田:ええ、でも、我慢してくれているのは明らかに伝わってくるんですよ。副社長だったときは、会議でよくぶつかっていました。「経験もないのに分かるわけないだろ」って。でも、取材のときは「うちの息子は任せられるやつだ」とかいって、めちゃめちゃ褒めてくれるんです。そんな人です。

就任から5年半、父に一度も相談したことはありません。家でご飯を食べていると、「ほんと何も相談せんね」って笑いながら言われますけど、結果で返すことが親孝行なのかなと思っています。

東大受験の失敗が生んだ「働き方改革」


谷本:そこから様々な改革をなされてきましたよね。中でも、まずこれはやらねば、と取り組んだのはどんなことだったんですか。

髙田:一番大きかったのは働き方改革ですね。やっぱり父の頃は、遅くまで残っていることが是とされていたんです。休みの日に出社していたら「お、頑張ってるな」って感じで。

遅くまで会社に残ることが目的化していて、生産性が圧倒的に低かった。僕はそれが嫌でした。僕自身、6時を超えるとパフォーマンスが落ちるタイプですし。というのも、僕には運良く「コンパクトに働くと、生産性が高くなる」と心から信じられるきっかけとなった原体験があるので。

谷本:それはどんな体験なんですか?

髙田:これは東大に合格したときの勉強法がヒントになっています。……というと嫌味に聞こえるかもしれないですが、実は僕、一度大学受験に失敗しているんです。

現役のときは、高校3年生の野球部を引退してから受験勉強をはじめたんですけど、そのときは理屈もメソッドもありませんでした。とにかくがむしゃらに勉強する感じで。

それで見事に落ちたのですが、そのとき冷静に考えたんです。「どうしよう……この一年で受からないとまずいぞ」って。そこで浪人したときに、絶対に早く寝る、1つの参考書を5回解くということを決めました。参考書を5冊クリアしたところで何度も同じ課題に直面するなら、1つの参考書を繰り返し解いた方がずっと身に着くんですよ。

谷本:そのときの考え方がベースになっているわけですね。

髙田:そうですね。
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文=石川香苗子

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